第6章 新しい住人-ショウトツ-
「い、いえ…本当に気にしないで下さい。私の方こそ大袈裟に反応してしまってすみませんでした」
ぎこちなく笑って謝罪をする。今は、恐怖に染まる顔も、震えていた身体も、激しく鳴っていた心臓の音も、治まっていた。
「紫鶴さんはこれからお風呂ですか?」
「そうだよ。残念だな、もう少し早ければ君と一緒に入れたのに」
「男女別ではないですか」
「なら女子の方に忍び込んで内鍵をするよ」
「見つけ次第、即通報です」
「はは、君は本当に手厳しいね」
「それに朱鷺宮さんに叩き出されても知りませんから」
「それは困る。まぁ濡れた髪の君も色っぽいから、それを見られただけでもいいとするか…おや」
振り返ると、滉が歩いて来る。
「やぁ滉、君もこれから風呂かい?」
「…あ、いや。…そのつもりだったけど、ちょっと用事を思い出した」
そう言って滉はさっと踵を返し、あっという間に部屋の方に戻ってしまった。
「…用事?」
「…そう言ってましたね」
何だか、違和感があった。
明らかに、私か紫鶴さんを避けたような。
「(なんか様子もおかしかったような…?)」
「あれ?そう言えば…彼と浴室で一緒になったことないような気がするな。まさか僕に襲われるとでも思ったんだろうか。女性しか襲わないんだけど」
「サラッと恐ろしい事言うのやめて下さい」
「もちろん君に襲って下さいって言われたら、喜んで僕はそうするよ」
「笑えない冗談ですね」
「相変わらず塩対応だなぁ。どうやって君を口説き落とすかまた考えなきゃ」
「先生、いい加減にして下さい」
「お風呂一緒に入ってくれるなら、もう君を揶揄うのはやめにするよ」
「入りません」
「もう一度湯に浸かるのも良いもんだよ」
「セクハラで訴えますよ」
「じゃあ今夜君の部屋に行って、一緒のベッドに入って、君が眠るまで隣で添い寝するっていうのはどう?」
「結構です」
紫鶴さんの揶揄いにいい加減どうしようか悩んでいると、今度は隼人が鼻歌交じりに歩いてきた。
「あれ、二人して立ち話?俺も混ぜて。」
「彼女がもう一度湯に浸かるっていうから僕も一緒に混ぜてもらおうかと思ってね」
「え……」
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