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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第1章 空の瞳の少女-トリップ-



「そんな!私なんて『公園の姫』なんて呼ばれるほどの者じゃ…」



「私のクラスでも久世さんは有名だったよ。実際この目で見た時は本当に可憐でお淑やかで物静かそうで可愛かった」



「!?」



思った事をそのまま口にしてみると、久世さんは恥ずかしげに顔を俯かせる。



「ご、ごめんね!意地悪するつもりはなかったの!ただ久世さんみたいな人を見るのは初めてだったから…!」



慌てて頭を下げて久世に謝罪すると、クスクスと控えめな笑い声が聞こえ、頭を上げる。



「立花さんは人を褒めるのがお上手ですね」



「貴女は笑っても可愛いんだね」



「!!」



「ふふ」



「(…噂通りじゃないお姫様だわ。この人だって笑うととても可愛いもの。)」



女学校時代の彼女は『灰かぶり姫』と名付けられ、近づき難い存在だった。そんな彼女はいつもどこか寂しげな目を宿し、周りとは違う空気を放っていた。



"立花詩遠さん"



『灰かぶり姫』───……



「(灰って、あの灰よね?どうして…こんなに綺麗な瞳をしているのに、そんな呼び名が付いたのかしら…。)」



「久世さんは」



「はい?」



「何か悩み事でも?」



「え?」



「ここに来た貴女の顔がとても沈んだように見えたから少し気になって」



「あ……」



「勘違いだったらごめんね」



申し訳なさそうに謝る私に、久世さんはポツリと話し始める。



「弟と喧嘩をしてしまって…」



「弟さんと?」



「私、縁談があったんです」



「!」



「そのことを弟にだけ話してなかったので…つい口喧嘩になってしまって…」



「縁談が…」



「……………」



「その人と結婚するの?」



「いえ、まだ正式に決まったわけではないんです。そんな提案があった、というだけで」



「…そうなんだ」



「その方の息子さんとの縁談なんですけど…弟はよく思ってないみたいなんです」



「久世さん…」



「甘やかし過ぎたんだと思います…」



「弟さんは一人だけ除け者にされるのが嫌だったんだろうね」



「!」



久世さんは私を見る。それに対して私は柔らかく笑み、彼女に言った。



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