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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第1章 空の瞳の少女-トリップ-



「貴女のことが大好きなんだね、弟さんは。だから貴女のことを大切に思うあまり、貴女に酷いことを言ってしまったんだと思うよ」



「…"大嫌い"と言われました」



「……………」



「自分で思っていたよりも、弟の言葉が深く突き刺さったみたいで…」



彼女は泣いたのだろうか。まだ少し、目尻に涙が浮かんでいる。



「だからあの子の好きなエクレアと本を買って行ってあげようと思ったんです」



「そうだったんだね」



「それで機嫌を直してくれるといいのですが…」



「大丈夫。もう一度、ちゃんと話し合えば、きっと久世さんの思いは届くよ」



「立花さんって、お優しいんですね」



「!」



ふふっと笑う彼女の言葉に照れてしまい、顔を俯かせる。



「あ、ありがとう…ございます…」



「ちなみに今はどんな本を読んでいたんですか?」



「えっと…ミステリー小説を」



「ミステリー小説…!」



「恋愛小説はどうにも苦手なんだ」



「じゃあ汀紫鶴の小説も?」



そう聞かれて、頷いた。



「あの人の小説は悲恋モノでしょう?官能的な描写が多いし…それに…最後は愛し合っても結局は死んでしまう。私は…少し苦手。」



「分かります、その気持ち。弟が汀紫鶴先生のファンで今日も発売した小説を買って来たんですけど…読んでいて辛くないのかなって思ってしまいます」



「久世さんは読書家なの?」



「父が読書家だったお陰で、私も弟も幼い頃から本に囲まれて育ったんです。家の書庫にも沢山の本があって」



「そんなに沢山の本があるんだ」



「立花さんのお家は?」



「うちにも書庫があるよ。色んなジャンルの小説が本棚に沢山並んでるから、読み応えはあるんだけど…ただあまりにも没頭し過ぎて使用人達に注意されたりする」



「そうなんですね」



「久世さんは芦屋しのぶ先生の『華綴り』が好きそうだね?」



「断然面白いと思います!」



「もしかして『令嬢界』も持ってる?」



「持ってます」



「そうなんだ」



「立花さんは『華綴り』や『令嬢界』をお読みにならないんですか?」



その質問に苦笑しながら答える。



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