第6章 新しい住人-ショウトツ-
「仲良くしたくない、とは言いません。でもやはり少し態度を改めて欲しいな、とは思います。一つ一つ丁寧に説明していくしかないですかねぇ。少なくとも、栞さんの言うことは聞くみたいですし」
「おい久世、お前ならどうする?」
隼人はツグミちゃんに視線を向けた。
「うーん…私も翡翠と同じ意見かな」
「やっぱりそうか」
「強くたしなめると、また反発してしまう気がするの」
「だろうな」
滉もツグミちゃんの言うことには一理あるようだ。
「ただ、完全に放り出してしまうと、それはそれで共同生活のことを理解する機会を失ってしまうと思うの。私だって、最初は戸惑うこともあったし。だから伝えるべきことは伝えて、後は穏やかに見守る感じかな?」
「…分かった。穏やかに見守ろう」
「その言葉、自分で忘れんなよ」
「(一先ずは…まとまったのかな。)」
「立花さんは鵜飼君をどう思いましたか?」
「!」
こちらを見た翡翠に問われ、考える。
「…鵜飼さんは」
全員の視線が私に注目する。
「本当は良い人だと思う」
「…良い人?」
微妙な表情を浮かべたみんなに対して、私は空色の瞳を真っ直ぐに見据える。
「素直じゃないだけで、人に気持ちを伝えるのが下手で不器用なだけなんだよ。すぐには無理だけど、時間が経てば、彼の心にも何かしらの変化はあると思うの」
「……………」
「私は鵜飼さんと仲良くなりたい」
「仲良く…?」
「彼はきっと、私達と打ち解けられる」
「その根拠は?」
滉に問われ、笑みで返す。
「根拠なんて無いよ。確かにさっきの態度は改める必要はある。でも、彼の日常は必ず良い方に傾くと思うんだ」
「…分かった」
「!」
「お前の言葉を信じる」
「うん、有難う」
隼人の言葉に私は笑みを浮かべた。
✤ ✤ ✤
「(…一応、もう音楽を聴くのはやめたかな。)」
お風呂から出て廊下に出ると、いつもの静けさが戻っていることに気付く。
「(鵜飼さん…見るからにツンキャラだった。これで"デレ"があれば少しは可愛げもあるのに。)」
私は、先程の隼人の様子を思い出す。
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