第6章 新しい住人-ショウトツ-
"そんなに上手くいくとは思えないけど…"と内心で呟き、私達は杙梛さんの店を出た。
そして午後7時───。
「もう鵜飼君は来てますかねぇ」
「午後には着くって聞いたからもういるんじゃないか」
「…少し、不安になってきました。どんなふうに挨拶すればいいんでしょう」
「いやでもさ、余り慎重に接し過ぎるのも良くないと思うんだよな。普通に、あくまでも普通に接した方が向こうも気が楽なんじゃないか」
「そうか、それもそうですね」
そんなことを話しながら私達がアパートに戻ってくると────。
「な、何だ!?」
「あそこ…確か、鵜飼君が入ったはずの部屋ですよね?」
階段まで聞こえてくるその音楽に、私達は顔を見合わせる。
「うーん…。初対面で注意するのもアレだけど…こういうのは最初にきちっと説明しておいた方がいいよな」
「うるさいのは勘弁」
「多分まだ色々不慣れで加減が分からないだけよ」
「だよな。…よし」
「(この音楽…ジャズ?)」
「今晩は、鵜飼君。ちょっといいですか?」
返事を待つも、聞こえてくるのは大音量のジャズだけ。
「鵜飼くーん!いいですかー!」
ドンドンッ
みんなで息を呑むようにして返事を待つ。けれど少し待ってもやはり返事はない。
「…この音のせいで聞こえないのかも」
「鵜飼君!!鵜飼昌吾君!!
いらっしゃいますよね──!!」
隼人がかなり荒っぽくドアを叩いた。
けれど───返事はない。
「…鍵は掛けてないみたいだな。不用心な奴め」
まるで不法侵入者のような台詞を吐き、隼人がドアノブを握り直す。
「鵜飼君!静かにしてもらえませんか!」
ドアを開けて部屋の中に入る。
「…何だ、貴様らは」
「…………!」
「な!?」
みんなが絶句し、立ち尽くす。
「不法侵入は犯罪だぞ。今日のところは多めに見てやる、さっさと出て行け」
「…おい」
そんな彼の態度に隼人の声が低くなった。
「出て行けと言ったのが聞こえなかったのか?僕は虫の居所が悪いんだ、怒らせないでくれ」
「(…衝突の気配がする。)」
私は顔をしかめさせている隼人を見遣る。
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