第5章 首相の苦悩-トモダチ-
「え?紫鶴さん?」
「ツグミちゃんが来る前に紫鶴さんと一緒に食べたんですよ」
「……………」
「尾崎さん?顔が険しいような…」
「俺も立花が作ったお菓子食べたい。もう残ってないの?」
「あ、冷蔵庫に残りがありますよ!尾崎さんも鴻上さんも甘いもの苦手じゃなければ召し上がってくださいね」
「有難う、後で必ず食べるよ」
「はい」
さっきまでしかめっ面をしていた尾崎さんだったが、笑みを見せたことにホッとした。
その後、星川さんもやって来て、今日もまたみんなで何軒も書店を巡った。
そして、午後7時。
「…さて、今日もそろそろ終了か」
「(今日も稀モノは見つからず…か。)」
「じゃあ俺は寄るところがあるんで、また。お疲れ様」
私もみんなと別れてから、何だか紅茶が飲みたくなって、フラマンローズに向かった。
「(明日も稀モノが見つからないと、ツグミちゃんまた落ち込むだろうな…)」
「あれ?貴女は昨日の…」
入り口で案内を待っていると、いきなり横から男性の声がした。
「あ…えーと…鷺澤、さん?」
「名前、覚えててくれたんですね」
「傷の具合は如何ですか?」
「残念ながら、小さなたんこぶが」
「本当に災難でしたね」
「でも内科志望の友人にも診て貰ったので大丈夫です。むしろ、それくらいで済んで良かったと思ってます」
「…そうですか。でも、大きな怪我じゃなくて安心しました」
「それよりも、今日はお一人ですか?
制服姿ということは…仕事の帰り?」
「はい」
「………。あの、もし…この後少しお時間があって、僕との相席がご迷惑でなければ…何か食事を奢らせて頂けませんか」
「え?」
「昨日のお礼です」
「そんな…私は何もしていません。どちらかと言えば一緒にいた二人が貴方を助けたようなものです。私は倒れている貴方を見ただけで動けなくなってしまって…情けないです」
「でも駆け付けて下さったじゃないですか」
「悲鳴が聞こえたら、誰でも駆けつけると思いますよ」
「そうでしょうか?でもあの時に来てくれたのは貴女達だったじゃないですか」
「あの時はそうでしたね」
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