第41章 天地神明にかけて・再-プロポーズ-
『縁談話を持ってきた』
『きっとお前を大事にしてくれる!』
『名前は──……』
「(八代隼人──……)」
縁談に興味はなくて全部聞き流してたけど…今、はっきりと思い出した。
おじい様があの時見せてくれたお見合い写真に写ってたのは…隼人だ──。
「思い出してくれましたか?」
「おじい様が持ってきた…お見合い写真に…貴方が写ってた…」
「けれど貴女はその話を断ってしまった」
「……………」
「それでも俺は貴女のことが忘れられず、どうすれば貴女が俺に興味を持ってくれるのか必死に考えたんです」
「あ、あの…」
「どうすれば俺のことを好きになってもらえるのか。貴女を振り向かせるにはどうしたらいいのか」
「隼人…?」
「そんな時、貴女が紅茶好きだと知って、もしかしたらこの店に来てくれるんじゃないかと思ったのです」
「え…?」
「隼人さんのお父上はこの店のオーナーでもあるんですよ!」
「!!??」
危うく落としそうになった紅茶は、側にいた篠田さんが支えてくれた。
「…騙してて、ごめん。でも親父の名前や金とは関係のないところでやってみたくて。その上で…お前に一人の男として俺を好きになって欲しかったんだ」
「隼人が…八代さん」
「親父がお前の見合い写真を持ってきた時は本当に嬉しかったよ。運命だと思った」
「!」
「でも隠してたのはそれだけだから!公園で一目惚れしたのも本当だし、お前のことは仕事仲間として尊敬してるし信頼してるよ!」
「…貴方が…八代さん…なのですか」
「戸籍ではそういう名前になっております」
「……………」
「からかってないよ、全部本当。でもって…詩遠さん。俺と結婚して下さい」
「……!!??」
今後こそ私は絶句し、呆然と彼を凝視めてしまった。
「貴女が好きです。幸せにします。もう一度、天地神明にかけて誓います」
「……あ、あの」
「俺の野望を叶えさせていただけませんか」
「あの、はや……」
「返事は如何でしょうか」
───何と言う狡猾な罠なのだろう。
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