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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第41章 天地神明にかけて・再-プロポーズ-



見知った顔に、私はつい安堵の声を上げてしまう。



「…あの、杙梛さん。私のこのドレス、スカーフと合わせるのは変でしょうか?変ですよね?」



「脱ぎたいなら俺が脱がしてやろうか」



「そんなことは一言も言ってません。ただこれ、少し胸が…」



「誰かさんの趣味なんじゃねーえー?
だってそれ選んだのあいつだろ?」



「……?何故そんなことをご存知なんですか?」



「この帝都で一番のドレス屋を教えろって言うからさー」



「……………」



「まぁいいぜ、仲睦まじい二人を引き裂くのもまた楽しいだろーしなー」



「一体何なんですか、もう」



「あーあー、こんなことならあいつがうちの店で告白した時にもっと邪魔すれば良かったなー」



「あれは!」



「まぁ今日はこれくらいで勘弁しておくか」



「紅茶お待たせしました!あ、でも隼人さんも来たんで!こちらへどうぞ!」



「…私ですか?」



言われるままに私は紅茶を携え、ビリヤードの台に向かう。するとそこにはスーツ姿の隼人が立っていて────。



「まずはこれをどうぞ、お嬢さん」



「!?」



彼は振り返るなり、大きな紅い薔薇の花束を私に差し出した。



「…隼人?」



思わず受け取ってしまった後、周囲の視線が私達に注がれていることに気付く。



「あ、あの…」



上手く状況が飲み込めず、困惑していると、優しい笑みで隼人は言う。



「野望を叶えようと思うんです、今日こそ」



「え、ええ?」



「ただ……───実はその前に一つ謝らなければならないことが。俺はずっと貴女に…嘘をついていました」



「え……」



ひどく哀しげな彼の顔に胸がざわめく。



「う、嘘って…一体…どんな?」



「俺の本当の姓は八代。本名は八代隼人」



「…八代?」



あれ…そんな名前、ずっと前にどこかで…



「貴女が結婚するはずだった男です」



「………………」



何か物凄い言葉が聞こえた気がした。けれどそれは余りにも唐突過ぎて、私の中に上手く入ってこなかった。



「もう一度言いましょう。俺は八代汽船の社長の息子で、貴女と結婚するはずだった男です」



「…八代…汽船…」



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