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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第40章 帰る場所-キュウサイ-



「全て上手くいくと思ったんだがな」



彼は銃を床に置き、隼人の胸に本を押し付ける。



「稀モノだ」



「!」



隼人は黒い和綴じ本を受け取り、真っ直ぐに長谷君を見た。



「尾崎隼人」



長谷君が彼の名を静かに呼ぶ。



「僕はお前が嫌いだ。精々彼女に愛想つかされないように気をつけるんだな」



「それはないよ。俺は彼女を愛してるし、彼女もこんな俺を愛してくれてる」



「!」



その言葉に私の頬は紅潮する。



「もし愛想つかされても、また俺を好きになってもらえるように頑張るし、振り向かせる自信がある。そこはご心配なく」



口角を上げ、不敵に笑んだ隼人に長谷君はふっと表情を緩めた。



「…愛か。僕の彼女への愛は…異常だったのかも知れないな。今回の役が…似ていたから」



「!」



『そういえば、長谷君、今度ドラマの主演に抜擢されたよね!』



『最初はただ純粋にヒロインを愛してたのに、ヒロインの周りに自分以外の男が近寄って来て親しそうにしているのを見た主人公の愛が狂気に変わる役だよね』



「僕は演技に入るとその役の仮面を被る。今回の役は…仮面が外れなかったんだ。演技はとっくにカットが掛かって終わっているのに…それでも仮面は外れなかった」



「(長谷君…)」



「もうどれが本当の僕だったか…仮面を被り過ぎて分からなくなった。仮面が外れていれば…お前を傷付けて泣かせることもなかったんだろうな」



「(きっと妹さんと幸せに暮らしていた頃が…仮面を被っていない、長谷君の本当の素顔だ。)」



「長谷叶斗、君を署まで連行する。抵抗はしないな?」



「えぇ、もちろんです」



「彼を連れて行け」



おじい様の合図で数名の警察官が長谷君の周りを取り囲む。



「どうやっても僕は…此処に戻って来てしまうんだな」



自分の運命を呪うように、長谷君は嘲笑するように嘲笑った。



長谷君が私の横を通り過ぎようとして…歩みを止める。



「詩遠、これだけは覚えておいた方がいい」



「!」



「お前は他人に優し過ぎる。その優しさは自分の身を滅ぼす事になる。どんなに頑張っても優しさだけじゃ人は救えない。」



「……………」



「だが…僕は救われたよ」



「!!」



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