第40章 帰る場所-キュウサイ-
「鳥籠の鍵は開けた。もう閉じ込めたりしないから勝手に何処へでも飛んで行け。僕との約束も守らなくていい」
「っ…………」
「傷付けて済まなかった。もう会うことはないだろうが…自分らしく生きろ」
「長谷君…」
「お前には感謝しているよ。
……─────有難う。」
彼が口許を緩めて笑った。あの冷たい瞳じゃなくて…茜色に似合う、優しい眼差しで。
長谷君が連行され、私は今になってどっと疲れが押し寄せてきた。
「(終わった…。やっと…終わったんだ。)」
「大丈夫か?」
「隼人…」
「よく頑張ったな」
「どうして警察の方々が?それにおじい様まで…」
「尾崎君から連絡をもらって詳しい話を聞いた」
おじい様が歩み寄る。
「お前達の会話も全て聞いていた」
「え?全てって…」
「立花、お前に渡したお守りなんだけど…中に盗聴器を仕込ませてたんだ」
「え!?」
「万が一ってことがあると困るだろ?だから小さい盗聴器を入れてお前に渡した。盗み聞きみたいな真似してゴメン」
「なんだ…そうだったの」
だがそこでハッとしておじい様を見た。
「あ、あの…おじい様…。今まで黙っていたことが…。実は私──……」
「詩遠や」
「は、はい…!」
「お前が何処の誰で何をしていたかなんてどうでも良い。お前は儂の可愛い孫だ。立花詩遠だ」
「おじい様…」
「それで良いじゃないか」
「っ…有難う…ございます…!」
「それとその子は…儂の方で預からせてもらえるか?」
「クロエ……」
「此処は暗い。安全な場所に移動させて眠らせてやりなさい」
警察の人達が丁寧にクロエを運び出す。それを悲しげに凝視める私を隼人が肩を抱いて引き寄せる。
「…大丈夫、彼女は安らかに眠れる」
「そうだといいな…」
「彼女はお前を守ったんだな。本当にお前の友達はお前も含めて勇敢だよ」
「うん……」
「ありがとな」
「え?」
「約束、守ってくれて」
「隼人……」
「帰ろう、俺と一緒に」
「うん……っ!」
早く帰ろう
みんなが待ってる
あのアパートに───。
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