第40章 帰る場所-キュウサイ-
「長谷…こいつはお前に悔いて欲しいと思ってるんだよ。罪を認めて、償って欲しいと思ってるんだよ。そういう奴だって…知ってるよな?それでもお前はこいつを傷つけて泣かせるのかよ」
隼人がつかつかと歩み寄り、長谷君の肩を掴む。
「お前は…そうしてまで自分の手元に置いておきたいのかよ!」
「…………っ」
「頼むから、もう止めてくれ。こいつを…泣かせないでくれ。頼むよ…───!!」
隼人の声が廃屋に響き渡り───すぐに静寂が満ちた。誰も何も言わず、まるで時間だけが止まったかのようだった。
「……──彼女の涙は苦手なんだ」
「…………!?」
「そう…昔からずっと」
瞼を閉じた長谷君はどこか諦めたような笑みを浮かべて切なげに呟いた。
「長谷君、"教えて"」
閉じられた瞼がゆっくりと押し上げられ、茜色の瞳が私に向けられる。
「君が執拗に私に執着する理由。私を意地でも連れて行きたい理由。それは…私が長谷君の妹さんに似てるからじゃないの?」
「!?」
驚いた長谷君は目を見開いた。
私はその反応が答えだと知る。
「さっきね、声が聞こえたの。"お兄ちゃんを助けて"って。その時に顔も見えた。妹さんの顔は…私に良く似ていたよ」
『これで…許してくれるか?』
『僕はお前に───』
「長谷君はあの日からずっと…妹さんに許して欲しかったんだね。だから彼女と同じ場所に私も連れて行こうとした。自分のせいで死んでしまった彼女に…償いをしたかったんだよね」
「……………」
「大丈夫。君が命を捨てなくても、妹さんならきっと君の罪を許してくれるよ」
「何故、お前にそんなことが分かる」
「分かるよ。だってあの時の彼女、命を断とうとする君のことを凄く心配してた。本当に許すつもりがないなら泣きそうな顔で助けてなんて言わないよ」
「…………っ」
「それに長谷君、最初から私を殺す気なかったでしょ?」
「!」
「だってその銃に最初から弾なんて入っていないもの」
「え……?」
隼人が驚いて長谷君を見る。深い溜息を吐いた長谷君はシリンダーの中身を私達に見せた。そこには弾は一発も入っておらず、警察官の人達も驚いていた。
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