第39章 生まれた意味-クロエ-
「どうして…何で私を庇ったり…」
本を開いた瞬間、クロエに体当たりされた。手から放れた本が床に落ち、その文字を読んでしまったクロエに稲妻のような光線が直撃したのを覚えている。
その後すぐにクロエの瞳は光を無くし、そこで彼女の意識はプツリと途切れてしまった。
「クロエ…?ねぇ返事して…!」
キュィィ…ンという音を最後にクロエの躰は傾き、ガシャンと大きな音を響かせて倒れた。
「クロエ!!」
よろめく体を必死に動かし、クロエの元に慌てて駆け寄る。
「クロエ!!しっかりして!!」
目を開いたまま動かなくなったクロエ。稲妻を直接浴びた衝撃で、全機能が停止してしまったのだ。
「いや!!クロエ!!」
横向きで倒れているクロエを抱き起こす。
「どうして私を庇ったりしたの…!!」
涙を流しクロエに呼び掛けるが、故障してしまった彼女に私の声は届かない。
「お願い!!動いて!!」
「無駄だ」
「!!」
「彼女はもう動かない」
「長谷君…」
彼もクロエが庇う事は予想外だったのか、顔色から血の気が引いていた。
「直して…クロエを直して」
「ここまで損傷が酷いと直せない」
「直して!!お願いだから!!」
体調は悪そうに見えるのに、いつも通りに振る舞おうとする長谷君に苛立ちが浮かんだ。
「今まで直せてたでしょ!?」
「それは直せる程度の故障だったからだ。でもこれは…直しても意味がない。既に彼女の躰は壊れてるんだ」
「ふざけないでっ!!!」
ギリッと歯を噛み締め、恨めしげに長谷君をキッと睨みつける。
「クロエが壊れたのは長谷君のせいなんだから!!責任もって直してよ!!」
「更に酷い後遺症が残る可能性がある。もう一度直せたとしても…彼女はもう『クロエ』としての記憶は維持していない」
「そんな…」
ショックで何も言葉が出てこない。私は壊れたクロエを涙を流す顔で見下ろす。
「"クロエ"としての記憶が消滅したなら、また新しい彼女と『はじめて』を作り直せばいい!!だから直してよ…!!」
「それはお前が可哀想だと言った事だぞ。記憶が無いまま生きる事は可哀想だと。お前は…新しい彼女にも同じ思いをさせたいのか?」
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