第39章 生まれた意味-クロエ-
「詩遠!読んでは駄目デス!」
本を開こうとした途端にクロエが叫ぶ。
「それを読ンだら貴女は炎に包まれまス…」
「黒いアウラは初めて見たな…」
長谷君が初めて書いた本は黒いアウラの輝きを放っている。でも決して嫌な輝きではなかった。どこか優しい色のようにも思える。
「貴女ガ死んでしまったら、貴女の想い人ガ悲しみまス!貴女は彼に二度ト会えなくなってもイイのですカ!」
「……………」
「早くその本ヲ捨て…」
「約束したの。絶対に最後まで諦めないって」
「!」
「(お願い、奇跡が起きて──。)」
「奇跡は起きないよ」
考えが見透かされたように長谷君が言った。それでも私は隼人の言葉を信じる。
「……………」
緊張と恐怖で手が震え、背筋に汗が伝うのを感じた。そして覚悟を決めた私は…本を開いた。
「っ、」
ドンッ
開いた瞬間、私の体は何かにぶつかり、突き飛ばされた。気付いたら床に倒れていて、慌てて体を起こす。
「─────!!」
中が開いたままの本が床に落ち、クロエはその文字を直接見てしまう。彼女の頭の中でピシ…ッと何かが壊れる音がした。
「え……?」
突然の出来事に驚いて放心する私は、本を見たまま動かない彼女の名前を恐る恐る呼ぶ。
「…クロエ?」
その瞬間だった…。
バヂィィィッッ!!!!
「っ!!?」
稲妻のように落とされた光線がクロエに直撃した。薄暗い廃屋が強い光によって明るくなり、あまりの眩さに目を開けている事が出来ず、私と長谷君は腕で両目を覆った。
しばらくして光が消え、腕を退ける。
「っ!?あ、あああ……っ」
その光景に私は顔を青ざめる。
「ク、ロエ…」
稲妻が直撃した場所に立っていたクロエの体から…電気のような線が唸るように出ていた。
「─────」
ピシ、ピシ、と壊れた音が私の耳にはっきりと聞こえる。彼女の肌は稲妻を受けた衝撃で皮膚が剥がれ、機械が剥き出しになっていた。
「いや……」
クロエは虚ろな目を宿し、一点を見つめたまま動かない。
「クロエ…っ!」
震える声で呼び掛けても、反応はない。
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