第39章 生まれた意味-クロエ-
「違うのクロエ!」
「…ずっと不思議でシた。目覚めル前の記憶ガ無い事が。笑えなイ事が。泣ケない事が。人とハ…違う事が。ずっと不思議だったのデス。私は…貴女の為に生まれタのですネ」
「っ…………」
「時々目の前ガ真っ暗になルのでス。視界に線のようナものが映り、それが激しク乱れまス。今思ウとあれは…故障の合図だったのデスね」
「お前が故障する度に僕はお前を眠らせて修理した。目覚めた時、お前に違和感が残らないようにな」
「…そうでしたカ」
静かに呟いて、クロエは私を見る。
「詩遠、一つだけ聞かせテくださイ。貴女ハ私をクロエとして見ていましたカ?それとも瑞希として私ヲ見ていまシたか?」
「え…?」
その言葉に一瞬動揺する。
「何…言ってるの…。そんなの…クロエとして見てたよ」
「詩遠、私は本当の気持ちガ知りたいのデス」
「……………」
やんわりと咎められ、私は言おうか迷ったが、クロエには本当の気持ちを話す事にした。
「最初は…瑞希として君を見てた。だって…ここまで似てるなんて思わないよ。ごめんね…」
「知っていましたヨ」
「え?」
「貴女が私と彼女ヲ重ねて見ていた事ハ分かっていましタ。言わずにいたのハ…瑞希のままでも良いト思ったからデス」
「どうして…?」
「貴女ヲ悲しまセたくなかった」
「クロエ…」
「時々私を見る貴女の目ガ…とても寂しそうでシタ。どこか苦しそうデ…辛ソウで…泣きそうな貴女ヲ見てルと…ココが…痛いのデス」
眉を八の字に下げたクロエは胸に手を当て、悲しげに言う。
「この感情ハ何なのですカ?」
「……………」
「とても…痛いのでス…」
「クロエ…」
「ごめンなさい詩遠。もし瑞希としての記憶があれば…貴女ヲ悲しませたりしなかっタ」
「!」
「もう…私ハいない方ガ…」
「それは違う!!」
「!」
「そんな悲しいこと言わないでよ…」
彼女がそこまで私の事で悩んでいたとは知らず、自分さえいなければと云う言葉に悲しくて泣きそうになる。
「私はクロエがいてくれて嬉しいよ」
「!」
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