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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第39章 生まれた意味-クロエ-



「あの屋敷は…まぁご都合主義と云うやつだ。そこは深く追求しないでくれ。ただ不思議だったのは…捨てたはずの本が、再び僕の手の中にあった事だ」



「まさか…」



「そう…僕が書いた本だ」



「(あの黒い本か!)」



「…黒い炎が視えたんだ」



「え?」



「綴り終えた時に気付いた。僕が書き上げた本が燃えていたんだ。でもそれは一瞬で消えてしまった。でも確かに…黒い炎だったよ」



「……………」



「妹の死後、風の噂で稀モノの存在を知った。驚いたよ…まさか僕が、一番初めに稀モノを生み出した人間だなんて」



長谷君にしては珍しい
自嘲めいた笑いを零した。



「あの世界で生きると決めた僕は、誰の目にも触れさせない場所に稀モノを隠した。そして僕は…再び物語を綴りたい衝動に駆られた」



「!?」



「それが原因で妹を亡くしたのに何を考えてるんだって軽蔑するだろう?だが…あの時見た炎の輝きを忘れられなかった。そして完成したのが瑞希が読んでしまった赤い本だ」



「そんな…」



「今度は見えなかった。だから僕は普通の本と一緒に紛れ込ませたんだ。あの世界の人間には稀モノの区別なんて付かないと安心していたからな」



「長谷君…」



「でもまさか…お前にアウラの力があるとは知らなかったよ」



私に支えられながらクロエはただ黙って長谷君の言葉に耳を傾けていた。



「クロエ…こんな話、君には…」



「大丈夫でス」



こちらも見ずにクロエは長谷君から視線を外そうとはしなかった。



「…他に書いた本はある?」



「いや、僕が書いたのは二冊だけだ。妹を死なせた黒い本と、瑞希が読んだ赤い本。それ以外に物語を綴った事はない」



「妹さんを…殺した本…」



「あの時、確かに妹と一緒に燃えたはずの本が何故か綺麗な状態で僕の手元にあったんだ。何度も燃やして捨てようとしたけど駄目だった」



"まるで呪いみたいだろう"と長谷君はおかしそうに笑う。



「(でも…笑う顔はどこか辛そうだ。)」



普段は弱さなど見せない完璧主義の長谷君だが、今の彼はどこか苦しそうで、返って弱々しく見えた。



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