第39章 生まれた意味-クロエ-
「絶対に…絶対に助けに行く」
「…有難う」
「間違っても元の世界に帰るとか言うなよ?突然いなくなったりもしないでくれ。約束出来るか?」
「…出来る」
「もしも俺を置いて消えたら、夢の中に現れてお前をこっちの世界に引きずり込むからな」
「それは怖い」
「……………」
「大丈夫だよ隼人。約束したでしょう?長谷君を説得して、絶対に隼人のところに帰るよ」
「あぁ…その約束、絶対に忘れんなよ」
「うん」
「よし。では俺の野望を楽しみにしててくれ。っと…そうだ、これ。お前が無事に俺のところに帰って来られるお守り」
空色の綺麗な御守りだった。安全祈願。うん、今の私にぴったりだ。それを上着の胸ポケットにしまい、隼人を見上げる。
「有難う」
「隠さんの事件を解決してすぐにお前のところに駆け付ける。それまで諦めずに頑張ってくれ。絶対に…お前を助けるから」
「うん、待ってる」
私は笑って頷いた。別れる時に隼人は私に優しい口付けをしてくれた。
お互いにもう一度会えることを祈りながら別れ、私は長谷君に言われた通り、一人で指定された場所に辿り着く。
そこは森の奥の更に奥、迷えば一発で遭難確定。そんな場所に一つの廃屋が建っていた。
「(全く人の気配がないからか…怖い…)」
ショルダーバッグをギュッと握り締め、覚悟を決めた私は、扉を押し開ける…。
「っ、クロエ!!」
重々しく開いた扉の先にいたのは…両手を後ろで拘束され、床に横たわるクロエの姿だった。
「クロエ……───!!」
私は慌てて彼女に駆け寄る。声を掛けてもピクリとも動かない彼女に嫌な予感がした。足や腕には擦り傷のような跡が残っている。
「クロエ!!しっかりしてクロエ!!」
「……詩遠?」
「クロエ──……!!」
うっすらと目を開けた彼女が生きていることを知り、私はホッとして涙を浮かべる。
「長谷君がやったの?」
体の自由を奪われたクロエを抱き起こして床に座らせる。
「そうだ。あぁでも、その傷は僕が作ったものではないよ。拘束される事に慣れない彼女がバランスを上手く取れずに何度も転ぶんだ」
「長谷君…!」
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