第38章 イニシャル-ウソツキ-
「腕、ごめんな。痛かったよな?乱暴に掴んで悪かった。痣とか残ってないといいんだけど…」
「ううん…大丈夫」
「隣、座ってもいい?」
「…どうぞ」
"ありがとう"とお礼を言って、隼人は私の隣に腰を下ろした。
「立花、さっきの話、聞かせてくれる?」
「……………」
「お前のことが知りたいんだ」
「私の…こと?」
「それ、さっきの奴だよな?」
隼人が私の手に持っている写真に目を向ける。私は咄嗟に写真を隠すように胸に押し当てた。
「違っ…これは…違くて…」
「別に問いつめたいわけじゃないんだ」
「彼とは本当に…」
「分かってる。友達なんだろ?」
咎める口調ではなく、優しく聞いてきた隼人に私は小さく頷く。
「そっか」
「ずっと隠しててごめんなさい…」
「写真、見せて」
「……………」
おずおずと写真を差し出す。
「詩遠、正直に答えてくれ」
長谷君を見た隼人の表情が真剣なものへと変わり、写真から私に視線を移す。
「お前は違う世界から来たのか?」
「!?」
「待った!逃げないでくれ!」
「う、やっ、離し…!」
「あーごめん!直球過ぎたよな!?本当ごめん!!」
逃げるように椅子から立ち上がろうとすれば、焦った隼人が手を掴んで謝る。
「な、何で知って…」
「さっき自分で言ってたじゃん、違う世界から来たって。それで察したんだ。時々お前の言動がおかしくなるのも、違う世界から来た人間なら納得がいく」
「……………」
「あとお前、嘘を吐く時、無意識にピアスに触れる癖があるだろ」
「!!」
「バレてないと思った?」
「隼人…」
「あんたが悲しむなら聞かないでおこうって思った。いつか話してくれるまで待とうって。でも…こいつがお前を悲しませてる原因を作ってるなら別だ」
写真の長谷君を睨んだ後、私を見る。
「俺はお前の総てを知りたい」
「っ…………」
「俺にお前を守らせてくれ」
力強い眼を向けられ、私は戸惑う。
「(総てを話す…)」
元の世界のこと。この世界に来た経緯。長谷君のこと。それを隼人に…。
.