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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第38章 イニシャル-ウソツキ-



「いいえ、全員見覚えはありません」



平然を装い、嘘を突き通す。



「本当に見覚えはないか?」



「はい」



「…そうか。変な事を聞いて済まなかったな」



「いえ…」



「……………」



ピアスに触れそうになるのを堪えていると、険しい表情を浮かべる隼人が私の腕を掴んだ。



「隼人?」



「本当に知っている奴はいないのか?」



「ど、うして…そんなこと聞くの?」



「例えば…コイツ」



隼人は朱鷺宮さんから写真を一枚抜き取ると、それを私の顔の前に突きつける。



「っ、」



「顔色が変わった。やっぱりコイツのこと知ってるんだな」



そこには長谷君が写ってる。彼は何を知っているの、何を知ったの。どうして…そんな顔で私を見てるの。



「知らないよ」



「ちゃんと俺の目を見て答えろ」



「……………」



「ほら…見れない。本当は知ってるのに何で俺達に嘘つくんだよ」



私はキッと隼人の目を見て軽く睨んだ。



「…これは何の質問?隠さんの事件と関係ないんでしょう?」



「確かに隠さんの事件とは無関係だ。けどお前とは関係があるんだろ?」



「(どこまで…知ってるの…)」



「…百舌山の手帳に、お前がビラ配りの日にコイツと会って親しげに話してたって書き込んであったんだよ」



「!?」



「立花、頼むから本当のこと言ってくれ」



「……………」



長谷君との関係が彼らに知られてしまえば、私が元の世界から来た事も、長谷君との秘密も、何もかも全部、知られてしまう…。



それだけは絶対に…隠し通さないと。例え嘘だとバレていても。



「彼とは昔からの友人。それだけだよ。友達なんだから親しげに話すのは普通だよね?」



「……………」



隼人の表情が訝しげに歪められる。



「知らないって言ったのは友達を巻き込みたくなかったから。これ以上はもう何も話す事はないよ」



「…どうして…嘘つくんだよ」



「嘘じゃないよ、本当に彼とは友達で…」



「質問を変える。"何を隠してる"?」



それは長谷君の事を聞かれているんじゃなくて、私自身の事を聞かれているんだと分かった。



「…離して」



「ちゃんと答えるまで離さない」



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