第37章 濡れそぼる雨-アヤマチ-
「!?」
慌てて階段を駆け上がってくるその気配に
私と隼人ははっと顔を見合わせた。
「朱鷺宮さん!何かありましたか!」
「隼人!良かった、ここにいたか!」
ホールに向かうと焦った様子の朱鷺宮さんがいた。
「どうしました!?まさかまた誰か…!」
「百舌山が…!帝都大学の百舌山教授が焼死体で発見された!!」
「まさか!?」
「………な!?」
「私は今から警察に行く!隼人、お前もこい!」
「分かりました!」
朱鷺宮さんに続いて玄関に向かって走り出した隼人が、不意に振り返った。
「……詩遠、今日はもう部屋から出るなよ?誰が来ても絶対に開けるな」
「え……」
「いいか、絶対にだぞ!厳守しろ!」
「(…今…百舌山って言ったよね?)」
『是非、君を研究してみたいと思っているんだよ』
『だから、百舌山教授には絶対に近付かない方がいいよ』
あの時の、骨張った異様に冷たい手の感触が蘇った。
「(あの人が…?)」
私はもう何かを考えることを放棄した。流しを水ですすぎ、力の入らない足で部屋に戻った。
✤ ✤ ✤
「おっはよう!」
「…おはようございます」
「…おはようございます」
「どうも」
「おはようございます…」
「ごめん、敢えて空気を読まずに挨拶してみたんだけど、やっぱり気になるよね」
「…それは、まぁ」
「深夜に栞達から一度連絡があってね、その時のことだけ簡潔に伝えておくよ。百舌山教授の死体の側には、稀モノも鴉の羽根もなかったそうだ」
「え!?」
「…それって」
「「……………」」
「側に落ちていたバッグに荒らされた形跡があることから、他殺の線が濃厚ではあるようだ。ただ財布の中の現金等はそのまま残っているらしくてね。となると、金品目的の殺害ではない可能性が高いよね」
「……───誰かの恨みを買ったとか」
「その可能性もあるだろうね」
「(誰かの恨みを…)」
「焼死ってことで今、僕達が捜している『炎の怪人』との関係が気になるところではあるけど…詳細はまだ分からない」
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