第37章 濡れそぼる雨-アヤマチ-
《え、でもさっき管理人さんがお湯張ったって。》
《そんなー!じゃあ掃除ももしかしてやってもらっちゃったかな…》
《まぁ丁度いいよ。俺も早くこの濡れた制服脱ぎたい。》
《そうですよね。僕は管理人さんにちょっとお礼言ってきますね。》
《行ってらっしゃい。》
翡翠が走り去り、滉が男子浴室に入った。
「…隼人…っ」
無意識に息を殺していたせいか、空気が足りなくなって微かに目眩がした。
よろめきかけた私を壁に押しつけながら、彼が囁く。
「…いっそ、声を聞かせてやれば良かったかな」
「……え」
「別にそういう趣味はないんだけどさ。ただ、そうすれば…お前が俺のものになったってみんな分かる。そうすればもう…誰も手出し出来ないだろ」
気恥ずかしさにどう答えていいか分からずにいると、彼が更に身体を強く押しつけてきた。
「あー…部屋に風呂が付いてたら、俺の部屋で一緒に入れたのになぁ」
「え!?」
「あんたを後ろから抱きしめながら湯船に浸かってさ。髪も洗ってもらって、ドライヤーで乾かしてもらって、パジャマのボタンも留めてもらいたい」
「い、一緒には入るのはちょっと…」
「何で?」
吐息から洩れる甘い声に体が震える。
「だ、だって…」
「あぁ…もしかして俺に悪戯されるんじゃないかって思ってる?」
「!」
「お望みなら…しよっか?」
「や……っ!」
耳朶を甘噛みされ、声が洩れる。
「俺は大歓迎だよ。あんたにたくさん触れて昨夜のあの声が聞けるなら…いくらだって触る」
「んん……っ」
緩んだストールの隙間から首筋にキスを落とし、舌を這わせる。
「ひゃっ!」
「それとも…ここであんたを抱こうかな」
「っ、だ、駄目…っ」
額や瞼、頬に口付ける彼の唇の熱さに、私の中の熱が上昇する。
「恥ずかしい?」
「こ、こんな所…誰かに見られたら…」
「じゃあ、俺の部屋ならいい?」
「うっ……」
返事に困っていると、小さな笑みを溢した隼人は優しい口付けをする。
「んっ…はぁ…んっ」
「あ…んん…んぅ…っ」
「…もっと触れさせて」
「(…狡い。隼人は…狡くて優しい…)」
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