第36章 ご褒美の味-シアワセ-
「それに、学生時代から女性に言い寄られてたような人なんでしょ?尻込みしてるうちに他の人に奪われたらどうするの?」
「それは…」
「その時に死ぬ程後悔しても遅いのよ?」
「……………」
「小瑠璃ちゃんの言う通りだわ。
告白するべきよ、詩遠ちゃん!」
「ツグミちゃん…?」
「後悔してからじゃ何もかも遅いのよ。時間は待ってくれないの。後悔する前に行動に移さなきゃ」
「………………」
「私も勇気を出す。だから貴女も一緒に出して。……───Good luek!」
「…そ、そんな…────」
駆け出した柾さんを唖然と見送った。
✤ ✤ ✤
「…困ったな」
頑張って詩遠ちゃん!…とツグミちゃんに背中を押され、とりあえず再び部屋に戻ってきたが…
『私、今夜これから告白します。
だから貴女も彼に告白しなさい』
「…いきなり言われても…」
『もし次に彼が巻き込まれたらどうするの?』
次に狙われるのは私かも知れない。けれど────彼かも知れない。
「……………」
『諦めルのですカ、好きと伝えなイのでスか。両想いなのに…叶斗様の為に貴女ハ自分の幸せヲ犠牲にスるのですカ?』
「(自分の幸せを犠牲に…)」
『それで貴女は本当に後悔シませんカ?』
後悔ばかりだ 私の歩んできた人生は
悔やんで 泣いて 苦しんで
それでも必死に足掻き続けて
結局…幸せすら望めない
本当…後悔ばかりの人生だな
「(大切な人が…また私の前から消える。)」
不意に涙が溢れそうになる。
「(いいの?そんな後悔ばかりの人生で?このままじゃ…あの時みたいに失うかもしれないのに。)」
『俺にとって立花は、誰よりも特別で、世界一番大事な女だよ』
「(っ…そんなの、絶対に駄目──!!)」
トントンッ!
「おい!おい立花!先輩、意識を取り戻したらしいぞ!!」
「!?」
ドアの向こうから響く嬉しげな声に、私の体が強張った。慌てて涙を拭い、ドアを開ける。
「あ、あれ?何で泣いて…まさか何かあったのか!?」
「ち、違うの。…さっきツグミちゃんと柾さんから葦切さんのことを聞いて…」
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