第36章 ご褒美の味-シアワセ-
「私に君を信じさせて」
《…お前は昔からそうだ。僕が知らなくていいと言っても、お前は『知りたい』からと僕を説得させようとする。》
《けど…こればかりはお前に話すわけにはいかない。僕の『秘密』だけは…誰にも理解してもらえないからな。》
「…分かった、もう何も聞かない。でもこれだけは覚えておいて。もし私の大切な人達に何かしたら…私は長谷君を許せない」
《!》
「例え友達でも」
《変わったな…お前は。》
その声はとても冷たかった。
《この世界に来たせいか。それとも…尾崎隼人がお前を誑かせたせいか。》
「!?」
《まぁ、どちらでも良い。ただし…間違っても奴に惹かれたりするなよ。》
「!」
《お前が幸せになることは許さない。僕の許可なしに勝手に幸せになったりしたら…総てを終わらせてやろう。》
「総てを終わらすって…」
《言っておくが、冗談ではないよ。"総てを終わらせる"…この意味が理解出来るな?》
「……………」
《安心しろ。お前が誰とも恋仲にならず、僕達と共に元の世界に帰れば、何もしないさ。》
「…脅してるの?」
《まさか。僕はお前を脅したりしない。》
「(嘘つき…。)」
《じゃあ、また───。》
最後は優しい声に戻り、通話を切られた。
「もう…遅いよ」
携帯の電源を切って部屋を出ると、ツグミちゃんと柾さんがいた。
「あ!詩遠ちゃん、あのね…!」
「もしかして葦切さん意識取り戻した?」
「どうして分かったの!?」
「柾さんが嬉しそうな顔してたから。良かったですね、目が覚めて。」
すると彼女は私を見て笑う。
「私、今夜これから告白します。
だから貴女も彼に告白しなさい」
「ええ!?」
「こ、小瑠璃ちゃん!?」
「私みたいに後悔して泣きたくないでしょう?彼だって絶対安全なんて保証はないはずよ」
「(こ、告白…隼人に?)」
「もし次に彼が巻き込まれたらどうするの?」
「…………!?」
『いっそ、フクロウなんて邪魔だーなんて言って俺に送りつけてくれればいいのにな』
心臓が、ぎゅっと痛んだ。
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