第35章 呪縛の炎-ケイコク-
「さっき…俺が何かしたかって聞いた時、"俺は何もしてない"って言ったよな?」
「!」
「本当は誰かに何かされたんじゃないのか?」
首から顔を離した隼人が真剣な表情で問いかける。
「え、な、何も…されてないよ」
嘘を誤魔化す癖でピアスに触れた。
「……………」
急に焦り出した私に隼人は疑いの眼差しを向ける。
「白状しないと今度は強く吸うぞ」
「!?」
「それかそこの長椅子に押し倒して、息も出来ないくらい激しいキスする」
「そ、それは…困る…」
「じゃあ何されたか言え」
有無を言わさぬ迫力に負けてしまった。私は観念して台所で起きた隠さんとの事情を話す。
「隠さんが…!?」
「…うん。驚いちゃって…」
「……………」
「大丈夫かな隠さん。何か悩み事でもあるのかな?体調が悪いとか…」
「…また、あいつのこと気にして」
「隼人、そんな言い方は良くない」
「そんな言い方にもなるだろ!」
「!?」
「あ、いや…そんな、一歩間違えてたら大怪我してたかも知れないし…首に手を伸ばしたのだって、もしかしたら絞め殺すつもりで…」
「お、恐ろしいこと言わないで」
「可能性はなくはないだろ」
「…それは」
「…頼みがあるんだけど」
「何?」
「これからさ、もう絶対に隠さんと二人きりにならないでくれるかな」
「またそんな…」
「つまんない嫉妬だよ」
「…隼人?」
何かがおかしかった。おどけるように笑んでいるのに、その瞳がちっとも笑っていない。
「もしどうしても書庫に用がある時は、絶対に作戦室に誰かいる時に入ってくれ。……───頼む」
「…分かった」
「良かった」
隼人は心の底からほっとしたように私に笑む。
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