第35章 呪縛の炎-ケイコク-
「うんうん、可愛い可愛い」
「!」
「やっぱりあんたは笑ってる方がいい」
「……………」
「あ、照れてる」
「もう離れてください」
「やだ。もっと見せて。」
頬を包まれ、顔を上げさせられる。真っ直ぐな薄赤色の瞳が優しげに揺れた。私は不覚にも彼の表情にときめいてしまった。
「…その犯人、すげー殴りたい」
「!?」
「いや、きっと殴る程度じゃ済まないな。嫌がるお前を無理やり襲ったんだ。殺したくなるよ…ほんと。」
「は、隼人…」
「そいつ、今はどうしてんの?」
「刑が執行されたよ」
「だろうな。外に出たらきっとまたお前に会いに来てた。必死になって探したに違いない」
あの犯人がまた私に会いに来ると思うだけで、背筋がぞっとした。
「そいつがお前に気安く触れたってだけでも…はらわたが煮えくり返りそうなのに…」
「私、汚くない…?」
「全然綺麗だよ。純粋で真っ直ぐで、俺だけがずっと触れてたい。こうやってさ…」
隼人が首筋に顔を近付け、跡の上から唇を押し当て、軽く吸い上げる。
「……んっ」
「やっ!」
ビクッと体が跳ねた私は、恥ずかしくて逃げようとする。
「だめ…逃がさない」
「やぁっ…喋らないで」
抱きしめたまま、何度もキスを落とす。
「んん……」
「お前から抱き締め返してくれるの初めてだな」
無意識に隼人の背中に両手を回してギュッと抱き締めていた。それを見た隼人が嬉しそうな声で言う。
「触れるのも…口付けるのも…全部、俺だけ───」
彼の髪が顔に当たり、くすぐったい。抱きしめられた体温は温かく、心地良かった。
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