第35章 呪縛の炎-ケイコク-
「でも代わりに…本当の理由を教えて」
「え……」
「…違うでしょう?だって今…隼人の瞳がいつもと違ってた。何か…隠してる」
「立花……」
知りたいのに知ることを拒絶される。
それは微かな、微かな不安だった。
『お前は何も知らなくていい』
「……───馬鹿だな、何も隠してないよ。お前には隠し事したくないって言ったじゃん」
「…本当?」
「言ったろ、つまんない下らない嫉妬だよ。俺がそれだけお前のことが好きだってことだよ」
「………………」
私は他人の嘘に敏感な方だと思う。だから彼が嘘をついていることに気付いた。
「……そう」
けれど私はその嘘に気付かない振りをしなければならなかった。これ以上、不安で心を押し潰されたくなかったから。
「でも…一つ、これだけは言っておくよ」
「(何だろう…)」
「もし、もしもだけど……───次にお前が犠牲者にでもなったら、俺はその犯人を絶対に見つけ出して殺すと思う」
「隼人!?」
「もしも、だよ。それくらい俺はお前のことが大切で、傷ついて欲しくないって思ってるってことだよ」
「………………」
「本当にそれだけは…覚えといて」
私は弱々しく頷く。
「よし、じゃあ部屋まで送るよ」
笑んではいたけれど、何処か見張るような色があった。
「……有難う」
だから、言えなかった。部屋まで送るなんて過保護だ───と。
その夜、私はベッドに入り目を閉じてからもずっと考えていた。この世界のこと、稀モノのこと、抱えている総てを───。
「……───終わらせなきゃ」
私は瞼をきつく閉じ
毛布を顔まで引き上げた。
next…