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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第35章 呪縛の炎-ケイコク-



「これも…俺に聞かれてほしくないこと?」



「……………」



「あのさ…流石の俺も好きな奴に近付かないでって言われるのは凄く凹む」



「それは…本当にごめんなさい。別に隼人が何かしたから拒絶してるわけじゃないの」



「別に謝らなくていいよ。でも近付いちゃいけない理由は教えてくれ」



「えっと…首に…」



「首?」



「大きな跡があって…見られたくないの」



「それって、いつもストールで隠してる場所?」



「うん…学生の頃にちょっと事件に巻き込まれて…首に跡が残ってしまったの。日が経っても中々消えなくて…今でもくっきり残ってて…」



「事件って…何の」



「それは…。とにかく今は駄目です」



「俺は、あんたに跡があろうと気にしない」



「私は気にするから…」



「もしかして誰かに何か言われたのか?」



「……………」



隠さんとの会話を思い出し、泣きそうになる。すると黙ったままの私に、隼人がゆっくりと近付いてきた。



「っ!何で近付いて…!」



私は慌てて長椅子から立ち上がる。



「ごめん。でも…泣いてる気がした」



「!」



目尻に溜まった涙を隼人は優しく拭う。



「は、離れて…」



「離れない」



「(どうしよう…どうしたら…)」



「見せて」



「え?」



「首の跡」



私は嫌われるのが怖くて目を閉じて首を振る。



「立花、大丈夫だから…」



「……………」



面白半分で言ってない事は分かっていた。逃げられないと悟った私は震えた手で押さえていた襟元から手を離す。



「っ……………」



隼人が息を呑んだのが分かる。



「気持ち悪いでしょう…?」



「それ…」



驚きや戸惑いが混ざったような顔の隼人を見て、あぁ、この反応はみんなと一緒だと思った。それから気味の悪そうな目をして私を突き放す。今までが…そうだった。



「どうしたんだよ…それ…」



「学生の頃に嫌な経験をしたって話したの覚えてる?」



「……あぁ」



「私ね…」



震える体を必死に抑え、涙ぐんだ顔で辛そうに笑う。



「強姦されたの───」



「っ!?強姦って…」



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