第35章 呪縛の炎-ケイコク-
《ですが…困っテいる人ヲ放っておけず、手を差シ伸べてしまうお節介サンで、誰かが虐められてイルと怖いのにも関ワらず、飛び出しテしまう勇敢な性格デ、友達ヲ大事にすル優しい人デス。》
「クロエ…」
《貴女はカッコイイです。》
「ふふ…初めて言われたよ」
《その脇腹の傷ガ証拠でス。》
「!」
《彼女ガ男達に絡まれテいるところヲ見つけた貴女ハ身を呈して立チはだかり、鉄パイプで男達ヲ薙ぎ倒しタ。》
《しかし…男の隠し持っテいたナイフが貴女の脇腹を掠め、傷を残シテしまった。》
「……………」
街で偶然、男達にしつこく絡まれている瑞希を見つけた。助けに入った私も一緒に何処かに連れて行こうとしたから近くにあった鉄パイプで男達を追い払おうとした。
でも男女の力の差は分かりきっていて、数人の男相手に鉄パイプを振るうのには限界があった。瑞希が助けを求めてもみんな怖くて関わりたくないらしくて、素通りして行く人達ばかりだった。
まさか私も折りたたみナイフを隠し持っているとは思わなくて、油断していたら脇腹を鋭い刃が掠めていた。それで出血した私が意識を失ったのを見て男達は逃げ出した。
目が覚めると病院のベッドで寝かされていて、側にいた瑞希は鼻水を垂らしながら泣いていたのを覚えている。
お見舞いに来てくれた長谷君にはこってり叱られた。あの時の長谷君の怒った顔は物凄く怖かった。もう体が震え上がる程に。
でも勇敢な性格は父に似たのかもしれない。警察官である父は仕事人間だった。弱い者の味方で、悪い奴は絶対に許さない。犯人に銃を向けられた時でさえ、真っ直ぐに犯人を見据え、厳しくも優しい言葉を掛け、罪を償わせていた。
そんな父よりも強かったのは母だった。専業主婦と言えど、学生時代は中高共に生徒会長を務め、成績は常にトップに君臨し続ける程、頭脳明晰で礼儀正しく、真面目な性格だった。
「(その血が流れてるのかも。)」
だから隼人に勇敢だの王子だの言われるはずだ。正直、自分より強い相手に立ち向かうのは怖い。逃げ出したいくらいだ。でも、恐怖に屈してしまえば、何も守れない。
私は…誰かが傷付くのは見たくない。
だからこそ、強い心を持って立ち向かうのだ。
.