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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第35章 呪縛の炎-ケイコク-



「まぁとにかく、今はそんなこと言ってる場合じゃない。そうそう、彼女達もお手伝いだよ」



「彼女達?………あ!」



見ると、紫鶴さんと杙梛さんの少し後ろで、しっとりと髷を結った芸者さん達がにこにこと笑っている。



目が合うと、そのうちの一人が下駄の音も軽やかに歩み寄ってきた。



「こんにちはぁ、私は美紗宕と言います。
お手伝いさせて下さいな」



「あ、有難うございます…!」



私は彼女に号外の束を渡した。



「もし要らないって言われても背広の中にぎゅうって押し込んじゃうから。じゃあ、行ってきまぁす」



「(背広の中にぎゅう…。)」



私が頭を下げた時、今度は横から声がした。



「詩遠!」



「累!」



「号外、向こうで貰って読んで驚いたよ。まさか連続犯の可能性があるなんて…僕で良かったら、手伝わせて。今、知人も何人か呼ぶから」



「…有難う」



「この帝都に危険なことが起きているなんて絶対に見過ごせない。じゃあこの束、貰っていくね」



「よろしくお願いします!」



街中でみんなが号外を撒く。



「(よし、私も…)」



「よければ手伝おうか」



「あ、有難うござ……」



振り向いた瞬間、ピシッと固まる。



「は、長谷君……」



茜色の瞳をした彼がクロエと一緒にいた。



「な、何でここに…」



「僕だって外くらい出るさ」



「………………」



「撒くんだろう?」



「あ、うん……」



私は紙の束を二人に渡す。



「『炎ノ怪人、現ル』か…。随分と煽ったな。
これで連続犯が見つかればいいんだが」



長谷君はクスッと小さく笑みを洩らす。



「教えて長谷君。君は…今回の事件に関わってるの?あの人と繋がってるの?」



「………………」



「何で長谷君は稀モノを持っていたの?向こうの世界で稀モノが存在するのはおかしい。長谷君…何を隠してるの?」



彼は何も言わない。



「…どうして、答えてくれないの」



「…何度も同じことを言わせるな」



冷たく鋭い眼光が、私に突き刺さる。



「───『お前は知らなくていい』」



そんな私達のやり取りを、クロエは号外を撒きながら横目でじっと見ていた…。



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