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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第35章 呪縛の炎-ケイコク-



翌日。柾さんとの待ち合わせ場所にツグミちゃんと向かうと、会社の車らしきそれから彼女が降りてきた。



「おはよう!沢山刷ってきたわよ!」



車の中から、同僚らしい人達が紙の束をどんどん運び出す。



「今もまだ輪転機動かしてるから!
どんどん撒いていいわよ!はいこれ!」



そう言って私達に分厚い束と腕章を渡した後
ふと思い出したように彼女が言う。



「あ、あのね、今さっき会社の事務の人にこの間の本のこと確かめてきたの」



「どうだったの!」



「受け取り箱にそれだけ残っているのを見つけて、もしかして配達しそびれて後から届けに来たのかも知れないって思ったんですって」



「!」



「それで、急ぎだったら申し訳ないと思って、慌てて届けたって…」



「……そう」



「とにかく、今はもう広めるしかないわよね!
じゃあ私、向こうで撒いてくるから!」



帽子を直し、彼女は気丈に駆けていく。



「さて…私達も撒こう」



「うん」



『帝都ニ炎ノ怪人、現ル!!』



撒こうとして、大きな見出しがつけられたそれは丁寧な文章且つ興味を煽るように綴られ、つい読み耽ってしまう。



その最後には───『柾小瑠璃』と記してあった。



「よう、お二人さん」



「あ、こんにちは!」



「紫鶴さん!杙梛さん!」



「ささやかな手伝いに来たよ」



「…手伝い?」



「僕は文字を綴ることしか出来ない非力でしがない作家だけど、紙を撒くくらいは出来るからね」



「………あ!」



「号外班の腕章は僕達は着けなくていいよね?そんな数もないだろうし。まぁ何かあっても、きっと栞が首相に相談して助けてくれるだろう」



「俺は基本的に見返りのない労働はしない主義なんで、お姫さんとお嬢さんの出世払いに期待しとくわ。たっぷりと利子つけて待ってるぜ」



「え!?利子!?いえ…わ、分かりました!とにかく有難うございます!」



「(利子…凄く高そうだけど…)」



「承諾したな?紫鶴聞いたか、証人頼むぜ」



「ならその時は僕もご相伴に預かろう」



「?」



「気にしない方がいいよ。絶対に如何わしいこと考えてるから。気軽に返事しちゃ駄目」



「お嬢さんは相変わらずだな」



「それはどうも」



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