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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第34章 彼女の提案-ヨワムシ-



「はぁ……」



思わず溜息が洩れる。



「…どうすればいいの」



私は、聞こえないように小さく呟く。みんなを裏切っている、その罪悪感に心を揺さぶるのを必死に抑え込み、部屋に戻ろうとした時だった。



「あ、いたいた隠さん。電話ですよ!」



地下から上がってきた滉が叫んだ。



「え?私に?」



「そうです、作戦室の番号の方に。
白井文具店って言ってましたよ」



「…そうか、有難う。すぐ行くよ」



✤ ✤ ✤


「柾さんツグミちゃん。いきなり出てごめんなさい。葦切さんの話を伝えて来たんです」



「おかえりなさい」



迎えてくれた彼女の声が先刻より元気そうで、先刻、重たくなった気持ちが少し晴れる。



「あのね詩遠ちゃん、さっき小瑠璃ちゃんと話していたんだけど…」



「どうしたの?」



「貴女達ってとにかく今はその危険な本のことを帝都の人に知らせなければいけないんでしょう?」



「そうですね」



「それでね提案なんだけど…号外を撒くのはどうかなって」



「号外ですか?」



「ラジオはまだまだ聞ける人が少ないでしょ?
こういう時はやっぱり紙だと思うのね」



「それは名案ですね。しかし…フクロウの名は知られていないですし疑われてしまう可能性もあるのでは?」



「だからもっと派手で衝撃的な内容にして、帝都っ子達の興味を煽るのよ。呼び名は『炎の怪人』なんてどうかしら?」



「面白そうですね。号外なら効果は覿面です。
あっという間に広まりますよ」



私はカップを手に笑んで見せる。



「そうと決まったら、私は一度社に行くわね。きっとまだデスクは残っているはずだから、説得してくる。でもまた……───この部屋に戻ってきていい?独りになりたくないの」



「もちろん!」



「よし、じゃあ行って来ます!」



「あ、そうだ待って!
近くのタクシー乗り場まで送る!」



「片付けはしておくので、柾さん、思う存分帝都っ子達の興味を煽る号外を期待してます」



「ええ、任せて!」



部屋を出た二人を見送り、私は飲み終わったカップをお盆に乗せて台所に向かった。



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