第34章 彼女の提案-ヨワムシ-
「隼人!」
階下に降りると、作戦室から戻ってきたらしい彼が目に入った。
「どうした?まさか柾さんに何か…」
「そうじゃないの!葦切さんがあの本を手に入れたのは…書店じゃないかも知れない!」
「え……?」
「あの事件があった日の夕方、葦切さんに本みたいな小包が届いたんだって。それを持って…公園に行ったとしたら?」
「………………」
「もちろん…ただの偶然かも知れないけど」
「小包、って…そんな」
「…気になる…でしょう?」
「……───先輩」
ぐらりと隼人の身体が傾いて
私は咄嗟にその肩を支える。
「何で…先輩が巻き込まれなきゃいけないんですか…」
「隼人…」
悲哀、後悔、そして───憎悪。昨晩よりも更に烈しい感情が彼の瞳に浮かんでいて、私の心臓が重く軋む。
「何も…関係ないはずなのに…こんなつまんないやり方に…引っ掛かんないで下さいよ…!」
次の瞬間、隼人はぐっと身体を離して言った。
「立花、俺はこれから朱鷺宮さんと猿子さんと話してくるから、お前は部屋にいろ」
「分かった」
「後…自筆の和綴じ本が小包で送られてきても絶対に読むなよ?」
「分かった」
✤ ✤ ✤
「………………」
「……立花君」
「!」
隼人が作戦室に戻った後、私は台所で一人、簡単な夕食の準備をしている途中、不意に後ろから名を呼ばれ、私はびくりとなった。
「な…隠さん…」
「聞いたよ。今回の事件の被害者は、葦切君なんだって?」
「隠さんも葦切さんと面識が?」
「以前、ツグミ君といたところに彼がやって来てね、一緒に昼食をとったことがあるんだ」
「(隠さんが外出に…?)」
「まさか…彼が…」
「…私もまだ、信じられなくて」
「でも、生きてはいるんだろう?」
「はい、幸い…ただ意識はまだ戻らなくて、火傷もかなり酷いと聞いています」
「そうか」
「どうして…葦切さんだったんでしょう」
「………………」
「犯人は一体、何がしたいんでしょう…」
「何故…そこで君が悲しむんだい」
「……え?」
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