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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第34章 彼女の提案-ヨワムシ-



「でも小瑠璃ちゃん、初めにも言ったように、まだ可能性なの。葦切さんがどうしてその本を手に入れたかも、今は確かめようがないし」



「……え?」



そこで思い掛けず柾さんがはっと顔を上げた。



「どうしたの?もしかして…何処で買ったか知ってる!?」



「そうなんですか!柾さん!?」



「本……」



柾さんは記憶を探るように何度か瞬いた。



「…『買った』ものじゃないかも知れない」



「え!?」



「どういうことですか?」



「あの日の夕方、拓真さん宛てに小包が届いたの。薄くて平たくて、本みたいな形だった」



その言葉に、心臓が大きく跳ね、私とツグミちゃんは顔を見合わせる。



「いつも郵便はお昼くらいに事務の人が届けてくれるのね。その日もちゃんともう配達があったのよ」



「!」



「なのにまた夕方にそれが届いて…珍しいなって、何か至急なものなのかなって思ったの」



「本の…小包…」



「丁度、拓真さんは夕食に向かうところだったの。だから封筒ごと持って出て行ったわ」



「…………!」



「(あの人が黒幕だと告げる事は…やっぱり出来ない。"気付かないフリ"をしなくちゃ。彼らに…長谷君との関係を知られてはいけない。)」



だから───ちゃんと演じないと。



「これって…何か手掛かりに…なりそう?」



「っ、柾さん!ツグミちゃん!私ちょっと出てくるから!紅茶とクッキーは好きなだけお代わりして飲んで!」



焦るフリをして立ち上がり、部屋から出た。その足で階段を駆け下りる。



「(…足取りが重い。息が苦しい気がする。みんなに…真実を伝えなきゃいけないことは分かっているのに…)」



躊躇う自分がいる────。



「(あぁ…そっか。私自身の事を聞かれるのが怖いんだ。元の世界のこと。それを話すにはとても勇気がいる。)」



誰も信じてはくれないだろう



みんなの反応が…怖い────。



「(それに…黒幕の正体を知っているのに、ずっと黙っていたことも責められる…。)」



隼人に嫌われたくない…



「(でも…この事件が解決すれば…)」



私は二人と一緒に



元の世界に帰る────。



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