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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第34章 彼女の提案-ヨワムシ-



「(瑞希が転落した場所には本が落ちてた。私が見つけた…あの赤い本だ。瑞希は読んでしまったんだ。だから本を抱えて窓から…)」



あれは…間違いなく稀モノだ。



そして私は…元々アウラが見える。



「はは…こんな結果になるなんて…」



きっと瑞希が死んだショックが大き過ぎて、本の存在を消すためにアウラを視る事を無意識に拒絶してしまったんだ。



「(あぁ…やっぱり私のせいだった。私が彼女に自殺に繋がるキッカケを与えた。あの本さえ見つけなければ…)」



クロエはじっと私を見つめている。



「…ホント最悪」



自分自身に呆れ、溜息が溢れた。



「(いろんなことが急すぎて…そこまで驚けないな。本当は取り乱して混乱してるのに…ここまで冷静になれるって…逆に怖い。)」



「引っ掛かりは解決しましたカ?」



「うん」



「何故、落ち込んでいるのデス?」



「私って本当に最低だなって反省してた…」



「詩遠は最低なのでスか?」



「うん…」



「これヲ食べれば元気になりマス」



顔を上げると目の前にバニラアイスが乗ったスプーンが、ズイッと差し出される。



「甘くて冷たいデス」



「…有難う」



小さく口を開いてアイスを食べた。



「(問題はやっぱり…どうしてあの世界に稀モノが存在するのか。そして…どうして長谷君が稀モノを持っているのか。)」



「もう一口」



まるで雛鳥に餌をやるかのように再びバニラアイスが差し出され、私はそれを食べる。



「(これは私の憶測だけど…もし、もし長谷君が……いや、やめよう。流石にその憶測はあり得ない。)」



軽く首を振って否定した。



「(今でも彼は…稀モノを持っているのだろうか。もしそうなら…回収しないと。)」



「ご馳走様でシタ」



アイスを完食したクロエはぺこりと頭を下げ、満足そうにお腹を撫でた。



「ねぇクロエ、長谷君って…黒い本を持ってなかった?」



「本デスか?」



「うん」



「それなら見ましタ。叶斗様が大事に保管していまス。あの本は…特別なのデスか?」



「うん、とても危険な本」



「そうなのですネ。ですガ読んだところ普通の内容でしたヨ」



「よ、読んだの!?」



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