第34章 彼女の提案-ヨワムシ-
「自分の気持ちに嘘は吐きたくないから正直に言うね。私は──隼人が好き」
「好き?」
「彼といるとね、幸せだと感じる事が多いの。私のことを一途に想ってくれて、とても大事にしてくれる。まぁ…正直過ぎてよく口が悪いって言われるんだけど」
私は苦笑する。
「でも正義感が強くて優しい人。真っ直ぐで頼りになって、他の人の気持ちを尊重出来る、素敵な人なんだ」
隼人のことを考えるだけで心が満たされる。こんな気持ちになるのはきっと彼だけ。
「好きなのでスね、その方が」
「でも…長谷君はそれを許さない。私だけが幸せになることを…彼は認めない」
「それガ何だと言ウのでス?」
「え?」
「諦めルのですカ、好きと伝えなイのでスか。両想いなのに…叶斗様の為に貴女ハ自分の幸せヲ犠牲にスるのですカ?」
「クロエ…」
「それで貴女は本当に後悔シませんカ?」
「!」
「叶斗様が貴女に掛けた呪いヲ、そろそろ解くべきでハありまセンか?その茜色のピアスに込められた───約束という名の呪いヲ。」
「……………」
私は茜色のピアスに触れる。
「まだ自分の罪を悔やんデいるのデスか?」
「私が瑞希を独りにしたせいで…」
「違いマス。貴女は何も悪クありませン。"彼女"は自殺だったのデス」
「本当に自殺だったのかな…」
「どういう意味デスか?」
「だって注意したんだよ。開いている窓は危ないから近付いたら駄目だって。それなのに瑞希が自分から飛び降りるなんて思えない…」
「なら…もう一度、初めカラ整理してみますカ?」
「初めから…?」
「順ヲ追って、ゆっくりト思い出せば、何かヒントが見つかルかも知れませんヨ」
「…そうだね」
「貴女は何故、叶斗様の屋敷にいたのでスか?」
「確かあの日は…彼女に呼ばれて長谷君の屋敷に遊びに行ったの。それで紅茶を飲みながら読書がしたいって言い出して…」
「それで本ヲ探す事になったノですカ?」
「うん。お互いに好きな本を持ち寄ることになったんだけど…その後の記憶が曖昧なの」
「ではソコから記憶ガ欠落してイルのですネ」
「(何をしてたんだっけ…?)」
私は記憶を手繰り寄せた。
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