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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第33章 茜色の再会-ジケン-



《いや…今は止めておこう。》



「黒幕の話題を出しておいて秘密にするなんてズルい…」



《まぁそう怒るな、いずれお前にも分かる。ただ詩遠、黒幕を決して逃がすな。》



長谷君は強い口調で言った。



「ねぇ長谷君、この世界には稀モノっていう、人を殺す本が存在するんだって」



《……………。》



「私達の世界じゃ信じられないよね。でも実際にこの世界では誰かが傷付いて悲しんでる。それは稀モノが原因で…多くの人達が親しい人や家族を亡くしてるの」



隼人のことが頭を過ぎり、私は辛くなって瞼を閉じる。



《僕らの世界と似ているようで似ていない。お前が悲しんで泣くのは僕も心を痛める。だが、誰も傷つかない世界など存在しないんだ。》



「!」



《お前だってそうだっただろう?彼女を…瑞希を亡くした時、お前は声が枯れるまで泣き続け、心に深い傷を負った。》



「……………」



《それと同じだ。彼等も同じなんだ。だがそれを乗り越えてみんな前に進む。未来に向かって歩き出すんだ。》



「未来に向かって…」



《この事件が片付いたら、お前は僕達と一緒に元の世界に帰ってもらう。》



「……え?」



突然の話に私の声が驚きに変わる。



《何を驚いている?お前はずっと帰りたかったんだろう?元の世界に。》



「!」



《…それとも、帰りたくない理由でも出来たか?》



「そんなんじゃ…」



《お前に言ったはずだ。僕を残して自分だけ幸せになるのは許さないと。それともまさか…幸せになりたいと望んでいるのか?》



「違うの長谷君!私は…!」



悲しみと失望の交じった声に
私は慌てて否定しようとする。



《何のためにピアスを付けさせたと思ってる。お前は"約束"を破るつもりか?》



「違う…約束を破るつもりなんて…」



《そんな怯えた声を出すな。冗談だ。》



「冗…談…?」



《お前はちゃんと僕との約束を守ると信じているからな。》



「……………」



《でも僕を心配させた罰として、やはり黒幕の正体をお前に教えておこうか。》



「!」



《この一連の事件を起こした黒幕は──……》



長谷君が楽しげに犯人の名を告げる。でもその名前を聞いても私は驚かなかった。



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