第33章 茜色の再会-ジケン-
「(ビラ配りをしていたのは彼女だったんだ…。そして私がぶつかった相手は…長谷君。)」
目眩を起こしそうな程、上手く状況が呑み込めず、片手で頭を押さえる。
《そういえば…あの新聞記者と言った男、彼は無事だったか?》
「は……?」
《稀モノの被害者なんだろう?》
「ま、待って…」
ドクンッ
「どうして…知ってるの?」
ドクンッ
「葦切さんが新聞記者だって…」
《以前、彼が取材しているところを見掛けた。
だから新聞記者だと知ったまでだ。》
「………………」
開いた口が塞がらなかった。
《他に質問は?》
「どこまで…知ってるの?」
《なんだ、そんなことか。》
彼は電話の向こう側で溜息をついた。
《総て知っている。葦切拓真の件も、久世ヒタキの件も、尾崎隼人の妹の件も…な。》
「どうして!?」
私は思わずベッドから立ち上がった。
《もちろん…お前達が今抱えている事件もだ。》
「………………」
目を見開いて唖然とする。
「え…どうして…」
《お前は『どうして』『何で』ばかりだな。》
「誤魔化さないで!!」
《あまり大声を出すと気づかれるぞ。》
「っ…………」
私は口を噤んで黙る。
《お前は葦切拓真の件
誰が犯人だと思っている?》
「…分からないよ」
《いいことを教えてやろう。》
「…いいこと?」
《久世ヒタキ、尾崎隼人の妹、そして葦切拓真…。この三人が読んだ本の著者は…。》
「待って!!」
その言葉の続きを聞くのが怖かった。
「な、何を言い出すの…?」
《知りたいんだろう?この一連の事件を起こした黒幕の正体を。》
「く、黒幕…?長谷君はどうして知ってるの?」
《お前は知っているはずだ。》
「何を…?」
《黒幕の正体だよ。》
「!?し、知らないよ…!!」
《本当にそう断言出来るか?
お前は犯人に心当たりはないのか?》
「心当たりなんて…ないに決まってる」
微かな苛立ちを募らせた。
《詩遠、お前は……─────》
長谷君はそこで言葉を止める。
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