第33章 茜色の再会-ジケン-
「………!!??」
聞こえてきた声に、一瞬、自分の耳を疑った。その声の主を私は知っている。学生の頃からずっと…変わらない声だった。忘れるはずがない。この声は…。
ピリリリリ…!
「っ!!」
タイミングを見計らったかのように着信音が鳴った。ディスプレイを見ると電話帳に登録されていない番号からだった。
「………………」
ごくり、と生唾を呑み込む。
ピリリリリ…ッ
心臓が急速に打ち続け、嫌な汗が止まらない。私は浅い呼吸をしながら…通話ボタンを────押した。
「も…もし…もし…」
《──やあ。》
「っ、」
《僕が誰だか分かるか?》
まるで知っているのにも関わらず、知らないフリをして聞いてくる声の主に、状況が掴めない私の頭は混乱している。
「は…長谷…君…?」
《クスッ。》
その洩れた笑い声は弾んでいた。
《声が震えている。
そんなに驚いたのか?》
「何で…どうして電話が…」
《まぁそこは御都合主義…というやつだ。》
「…本当に長谷君、なの…?」
《お前は僕の声を聞き間違うのか?》
「どうして…一体、どういう…」
《本当にビラの効果はあったな…》
「え?」
嫌な予感がした。
「ね、ねぇ…長谷君…。今どこに…いるの?」
《何処に…か。お前と僕は一度街で会っているだろう?》
「!まさか…あの時ぶつかったのって…」
使用人と別れた後、私は街で深めの帽子を被った男性にぶつかってしまった。今思えば、その声に懐かしさを覚えた。
「(そうだ…あの時の声は…)」
《信じる気になったか?》
「長谷君、答えて…」
とりあえず冷静を装って
私はいくつか質問を始める。
「どうしてこの世界で通話が出来るの?」
《だから言っただろう?そういう物語だからだ。それ以外は答えられない。》
「じゃあ…君は今、何処にいるの…?」
返答はない。
「…どうやって…この世界に来たの?」
《………………。》
「答えられないの?」
《……………。》
「ねぇ…もしかして…あの子も一緒にこの世界に来てるの?」
《ああ、彼女も一緒に来ている。》
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