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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第33章 茜色の再会-ジケン-



「それで朱鷺宮さん、猿子さん。早速ですが、明日からどう動きますか?」



「『取扱注意』から……────『禁止』にすべきだろうな。売買も、閲覧も」



「まぁ…そうなりますよね」



「こういった対応はしたくなかったが、また事件が起きる可能性は充分にある。しかも…無差別。もしそいつが何冊も書き貯めていて、それが一気にばらまかれでもしたら…どれだけの犠牲が出るか」



思いも寄らなかったその言葉に、私はよろめいた。それはもう───『本』と呼ぶことすら怖い。誰かを傷つける『武器』のようだ。



「万が一、万が一だが、それを省庁の奴が読んでしまったら、人死にが出たりしたら……───今度こそうちは潰されるだろうな」



「それだけは避けたいですね」



「ただ今回に限っては、とにかく一般の皆さんに『手に取らせない』『読ませない』方が重要だ。読んで起きる影響がほぼ分かっているからね」



「……………」



「だからまず、明日は研究部のみんなに片っ端から書店に電話してもらって、棚から総ての『自筆の和綴じ本』を一度撤去するようにお願いする。少なくとも、故意に隠したりしなければそう多くはないはずだ。それを尾崎君達に回収してきて欲しい」



「分かりました。……残る問題は、個人の家の方ですね。久世の家がそうだったように、自宅の書庫などに眠っている場合も予想されます」



「(もしかしたら立花の家にも…)」



「かと言って流石に、帝都中の家にいきなり押し掛けて家探しするのは現実的じゃありませんし」



「新聞が一番いいと思うが、それも首相と相談してからになるだろうな。私はこれから首相に連絡を取るよ」



「それじゃあ、僕も向こうに一度戻るよ」



「色々あって二人にも苦労を掛けるが…よろしく頼む」



そうして二人が地下に降りてゆき
ホールには私と隼人が残された。



「…大丈夫か」



「大丈夫」



「俺だってこう見えても動揺してるよ?まさか筆跡の話まで出てくるとは思わなかったから」



私は苦く笑んだ。



「…もしかして、俺のこと、冷血漢って思ってる?」



「……え」



「さっき…そんな瞳をしてたから」



「違う、そんなことは…思ってない」



私は力なく首を振る。



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