第33章 茜色の再会-ｼﾞｹﾝ-

「…平気だよ」



彼が小さく苦笑した。



それでもすぐには口を開かず、何度も言葉に迷うように荒っぽく髪を搔き上げる。



「隼人がそう言うなら…聞くよ」



「……じゃあ」



あんなことがあったというのに、不思議と私は冷静だった。もしかしたら冷静とも、また少し違うかも知れない。



「この前、妹が稀モノで自殺したって言ったよな。あれの…詳しい話なんだけどさ」



「……うん」



「あいつ、ある本を読んでて…いきなり焼身自殺を図ったんだ」



「……え？」



「幸い、一命を取り留めたんだけど……────全身に火傷が残っちゃってさ。……特に、顔とか酷くて。それを悔いにして…結局、睡眠薬を大量に飲んで自殺した」



「………！？」



「ごめん、ずっと言おうか迷ってた。俺の勘違いかも知れないし本当の偶然の一致かも知れないって…思い込もうとしてた。でも…今度の先輩の事件、俺の妹のに似てて凄く…凄く嫌な予感がするんだよ」



「…た、確かに、似ているとは…思うけど…」



そう口にすることが恐ろしかった。
認めたら、真実になってしまいそうで。



「それと…あ、いやこれは…また…後で」



彼が何かを誤魔化したのは分かった。けれど今はそれを追求するよりも、どうにか自分を落ち着かせることで精一杯だった。



「…先輩、さ。お前は気付かなかったかも知れないけど、側に油の缶が落ちてた」



「！？」



「でも違うんだよ！そうじゃなくて…先輩はカラスのことを追っていて、絶対に自分から自殺するような人じゃないんだよ！」



『あのひたむきさが…仇にならなければいいのですが』



「(嫌な予感が的中するなんて…)」



「だから、もしかしたら…もしかしたら、先輩に限ってはカラスの仕業って可能性もある。燕野の友達の件もあるしさ。……────黒い羽根はなかったけど」



「羽根？」



「カラスの奴等が邪魔者を消す時には必ず現場に黒い羽根が落ちてるんだよ」



「………！？」



「でも…少なくとも俺の妹も久世の弟も、カラスなんて全く関係ない。……だろ？」



私は小さく頷いた。



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