第33章 茜色の再会-ジケン-
「どいてよ!通して!どいてったら!」
「!?」
「私は知り合いなんだから!通し…」
「駄目、柾さん!!」
「立花さん!?」
私は咄嗟に駆け寄り、彼女を押しやる。
「…何してるの、邪魔しないで」
「駄目です……────!!」
「離して!会社に連絡があったけど…私、信じないから!」
私は必死に柾さんの目を塞ごうとした。けれど、彼女の力の方が強かった。葦切さんに近付こうとする彼女の力の方が───強かった。
「……見ちゃ……駄目……っ」
「…葦切先輩?」
「…柾さ…」
「……やだ……嘘……でしょう」
「見ちゃ…だ、め…」
彼女は凝視していた。焦げた靴を。
「拓真さ……────」
きっと彼女も私のように…
「いやあああ……────!!」
「……………」
私はきつく瞼を閉じた。彼女の悲鳴が、泣く声が、あの頃の私と一緒だった。
「柾さん…」
「こんなの信じないんだからぁ……────っ!!」
私は激しく身体を震わせ、半狂乱で叫ぶ彼女を必死に抱き締める。
「嘘、嘘、嘘ぉ……!!こんなの絶対に嘘なんだからぁ……!!」
彼女を抱き締めたまま私は静かに瞼を閉じた。
やはり、この街の何処かにこうして本はあったのだ。
「信じないんだからぁ……───!!」
どうしてこの世界は
「拓真さん……────!!」
こんなにも残酷なのだろうか────……
✤ ✤ ✤
「………あ」
作戦室に向かおうと一階に降りると
ホールで隼人が独り佇んでいた。
「彼女の様子は?」
「ツグミちゃんの部屋で泣き疲れて…眠ったみたい」
「……そうか」
「今ってどうなってるの?」
「朱鷺宮さんと猿子さんはずっと相談してる。それまで何もするなって。滉達も部屋で待機中。この件は……」
隼人はそこで言葉を切った。
先輩である葦切さんがあんなことになり、彼も辛いに違いない───そう思った時だった。
「あのさ、立花。今から、余り良くない話していいかな」
「……………」
「彼女があんなことになってお前も落ち込んでると思うんだけど…でも、聞いて欲しいことがある」
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