第33章 茜色の再会-ジケン-
「あ……っ、あああ……」
カタカタと躯が震え、目を覆いたくなるような現実に恐怖し、全身の力が抜けたようにその場にへたり込んで座る。
「…葦切さ…」
呼吸が乱れ、恐怖のあまり、目に涙が浮かぶ。野次馬の声が聞こえず、ただ葦切さんの姿だけを一点に見つめ、放心する。
「ハァー…ハァー…」
隼人が跪いているせいで、私からは足しか見えない。黒焦げの衣服が張りついたその足が、微かに動いた。
「先輩!しっかりして下さい!!」
「……ぅ……ぁ……────ま、さ……」
「おい!医者呼んだのかよ!」
「よ、呼びました!もうすぐ来ると…」
「先輩!何で、こんな…!!くそ……っ」
「おい!そこの!勝手に遺体に触るな!!」
「っざけんな!!遺体じゃねぇよ!!まだ生きてる!!」
「む……」
隼人が憎悪めいた眼差しを警官に向けた時だった。
「うっ!痛……ッ」
少し離れた芝生の上に、一冊の本が落ちている。それを見た途端に激しい頭痛が起こり、頭を抱えた。
「隼人!本が…稀モノが!!」
痛みを堪えてよろりと立ち上がって駆け寄り、その本を掴み上げた。
「!?」
「(間違いなく…稀モノだ…)」
アウラは見えないが、私の中で確信があった。
この手の中にあるのは、稀モノだと。
「…まさか…葦切さんは…」
「な……────」
「おい、そこの女!
現場のものに勝手に触るな!」
「俺達はフクロ…帝国図書情報資産管理局だって言ってんだろ!稀モノに関しては証拠品の回収が認められてんだよ!」
「…帝国図書?……ああ、そう言えば聞いたことがあるな。ということはこの事件はお前等の不始末ということか」
「……な!?」
「そもそも、そんな妙な本なんてインチキではないのか?この男も単なる自殺じゃないのか」
「…この…!!」
隼人が立ち上がり、咄嗟に警察官の胸倉に手を───かける寸前で、動きが止まった。
「…自殺か、事件かなんてこれから調べることでしょう。無責任なこと言わないで下さい」
「ふん、何様のつもりだ」
「(あの時と同じ対応…。彼女が死んだ時と…)」
頭痛は一向に収まらない。
.