第33章 茜色の再会-ジケン-
「さて、本日は新人である立花君がしっかり働いているかこの目で確認させてもらう」
「……………」
またしても、昨夜の欠片は微塵もなかった。
微かに苛立たしくもあり、羨ましくもあり、こんな時にひょっとして彼はとても大人なのではと思ってしまう。
「言っておくけど、これは朱鷺宮さんの命令だからな?俺が我が儘を言ったわけじゃないぞ?独りで巡回に出るようになって少し経つし、このあたりでまた一応な」
…昨日のあの百舌山さんのこともあるし。
隼人が一緒なら安心だ
「…今日はよろしくお願いします」
私は深々と頭を下げた。
✤ ✤ ✤
その日も、いつも通りに終わろうとしていた。幾つも書店を巡り、稀モノは見つけられず、ただ平和に、何もなく終わろうとしていた。
────その時までは。
「あれ?向こうが騒がしいな」
「…何か事件?」
公園の入り口に、野次馬らしき人だかりが出来、警察官の姿も見える。
「行ってみよう!」
私達が駆け付けると、公園の中は、更に騒然としていた。
「お前達、どけどけ!近付くんじゃない!」
「見せ物じゃないぞ!散れ!ほらさっさと!」
警察官の怒声など全く意味をなさず、多くの通行人が何かに群がっている。
隼人はその人混みを掻き分け────。
「…失礼します!俺達……う!?」
「…………っ!?」
咄嗟に隼人が私を強く抱き込んだ。ただそれは───私の目を塞ぐためのものだった。
「(い、今の…誰か…倒れ……────)」
炎の残り香があった。焼け焦げた臭いと油の臭いが入り交じって辺りに立ち込めている。
「……────先輩?」
「え!」
「立花!お前は絶対に見るなよ!」
隼人が勢いよく私から身体を離し、横たわるその人物に駆け寄る。
「貴様!近付くなと言っているのが聞こえんのか!」
隼人が素早く手帳を突き出す。
「俺は帝国図書情報資産管理局の尾崎です!この人の…知人です!!」
「…葦切さ…」
見ずにはいられなかった。背筋が一気に脂汗でぬめり、足が震える。
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