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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第30章 口は災いの元-コマドリ-



「ギンザにね、ナハティガルって名の、馬鹿みたいに豪華なダンスホールがあるんです」



「ナハティガル…」



「そこで…稀モノのオークションが行われてるって噂なんです」



「…あ!それなら入ったばかりの頃に少し聞きました」



「おう、そうでしたか。ただこいつらがもう本当に姑息で卑怯で、絶対に尻尾を掴ませないんですよ。そこのオークションで本を手に入れた客が死んだって話もあるのに、何処吹く風で」



「…………っ」



「だから俺は断じてそいつらを許しません。だってそうでしょう?誰かを苦しめるために書いた本なんて」



「え?それは…どういう意味ですか?
誰かを苦しめるって…」



「……ああ」



そこで葦切さんは短く周囲を伺い
僅かに声を落とした。



「実はね、そのオークションで扱ってる稀モノはかなりヤバいものらしくて。どうもそれを使って客を操ったり、時には…殺害したりしてるようなんです」



「え……!?」



「しかも、その稀モノは偽物じゃないかって噂もあって…それはつまり、『故意』ですよね?」



『故意』



葦切さんのその言葉に、鉛を飲み込まされたような不愉快さを覚える。



「そんな…偽物なんて…どうやって?」



「流石にそこまでは俺も分かりません。稀モノっていうのは本来、強過ぎる念のようなものが宿った本と聞いてます」



「……………」



「それは『偶然』生まれたもので、俺としてもそこに『悪意』は感じられません。でもカラスのそれが本当なら、『故意』に『悪意』をばらまいてることになるじゃないですか」



「…そういうことに、なってしまいますよね」



「貴女方のような若い女性に、こんな物騒な話して済いません」



「………………」



「流石は記者さんですわね。そこまでお調べになられて凄いですわ」



「諦めが悪いのだけが取り柄なんですよ」



「少し立ち入った質問になるかも知れませんが、何故そこまでして?何か事情でも?」



「事情?」



「葦切様がそこまでして稀モノを追い掛けている理由です。私は稀モノについてそんなに詳しくはありません。ですが…多くの方は稀モノという本によってご家族を亡くされたと聞きます。葦切様も…ご家族を亡くされたのですか?」



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