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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第30章 口は災いの元-コマドリ-



「…じゃあ立花さんは宗一郎氏との血の繋がりはないんですね」



「実はそうなんです。知っても相手の方もあまり良い気分ではないので話さないのですが…。ですがおじい様は本当の孫として私を可愛がってくれています」



「警察の方からご連絡を受け、旦那様がお迎えに上がったのがお嬢様でして。あの方はお嬢様のことを快く立花家に迎え入れました。だからこそ私共はこうしてお嬢様に出会えたのです」



彼女は嬉しそうに笑んだ。



「そうだったんですね」



「ですが今、とても物騒な事件が相次いでいますでしょう?旦那様はお嬢様が危険に巻き込まれないか物凄くご心配をされているのです」



「ああ、稀モノ絡みの事件ですか…」



「でも犠牲者を出す前にアウラが見えるツグミちゃんが稀モノを見つけてくれるので、とても安心なんです」



「確か久世さんは稀モノのアウラが見えるんでしたよね?」



「そうらしいです」



「お嬢様、もしかして久世ツグミ様という方は…」



「弟さんが稀モノの被害者なんだよ」



「そうでしたか…。その事件がきっかけでアウラというモノが視えてしまわれたのですか?」



「うん」



「お可哀想に…。」



「でも彼女がいるおかげで私達は稀モノを探すことが出来る。彼女はフクロウにとっては欠かせない存在なんだよ」



「アウラって…どんな感じなのですか?」



「詳しくは聞いてないけど…まるで本そのものが燃えているみたいなんだって」



「まあ!本が燃えるのですか!」



「本当に燃えてるわけじゃないよ。書いた者の情念が色として本に宿るみたいなんだ」



「それを久世様は視ることが出来るのですね」



彼女の声は悲しそうに沈んだ。



「葦切様は何故、稀モノを追い掛けているのですか?」



「俺は…面白半分で稀モノを追い掛けているわけじゃないんです」



そこで葦切さんは珈琲を啜り、言葉を迷うように何度も視線を彷徨わせた。



「鈴森さんや立花さんはご存知ですか?あの……───『カラス』のこと」



「…鴉?あの黒い?」



「光り物が好きな黒い鴉ですか?」



「いえ、その鴉ではなくて…」



葦切さんは冷めかけた珈琲を飲み干した。



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