第30章 口は災いの元-コマドリ-
「もしかして、駒鳥を知っているのですか?」
「ううん、知らない」
茜色のピアスに触れながら答える。
「………………」
「その子の駒鳥、早く見つかるといいね」
そうして歩き出そうとした時だった。
「立花さーん!」
「葦切さん!」
先日のあのフラマンローズでの攻防戦が思い出され、隼人の顔がぱっと浮かぶ。
「こんちは!今日もお元気そうで何よりです!」
「こんにちは」
すると葦切さんが、しげしげと使用人を見た。
「ええーと、こちらは立花さんのお知り合いの方ですか?見たところ、女中の様な格好をされているようですが…」
「…お嬢様、こちらは?」
「ああ、これは失礼致しました!
私は『帝都新報』の葦切拓真です」
「…まぁ、新聞社の方ですか。初めまして、私は鈴森恋歌と申します。詩遠お嬢様のお世話をさせて頂いている者です」
「お嬢様?」
きょとん、した顔で私を見る葦切さん。
「この方は立花宗一郎様のお孫様なのですよ」
「え!?あの立花警視総監の!?」
「実は…そうなんです」
あまり知られなくはなかったが、やむを得ない。まぁ葦切さんは悪い人じゃないし別に話しても問題はないか。
「まさか立花さんが…。道理で華やかで可愛げのある方だと思ってました!」
「そ、そんな…」
「そうなのですよ。お嬢様は特別お可愛らしいのです。それでいて頭も良くてスタイルも抜群で飛び抜けてお優しくて笑顔がとってもキュートな方なのです!」
「ちょ、ちょっと…?」
ふふーん!と胸を張って自慢をする彼女に気恥ずかしさを感じた。葦切さんも笑んで何度も頷いている。
「そうですわ、私達これから昼食と思っていたのですが、もしまだでしたら葦切さんもご一緒に如何ですか?」
「そうですか、では是非!」
そうして葦切さんも加え
私達はフラマンローズへと向かった。
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