第2章 新しい居場所-フクロウ-
それは、まるで…───。
「綺麗!!」
「………っ!?」
男の子だろうか、女の子だろうか。
夜目にはどちらにも見える。
そうしている間にも、その人の足下の炎はいよいよ大きく燃え上がり、夜の裏庭を照らす。
不思議な色の炎が、彼の周囲で踊る。得体の知れない──でも目を離せない美しさがあった。
「あれ、もしかして貴女…今日から入った新しい方ですか」
問われて、私はやっと気付いた。形は違うけれど、朱鷺宮さんのような制服を身につけている。
「あ、突然声をかけてしまって申し訳ありません!」
慌てて頭を下げ、謝罪する。
「いえ、大丈夫ですよ。僕は星川翡翠と言います。フクロウの一員です」
「フクロウの…」
「いきなり妙なところを見られてしまいました…。あの、貴女も『能力者』なんですか?」
「いえ、私は違います。もしかして星川さんは『能力者』なのですか?」
「そうです」
「やっぱり!」
「え?」
「あの青い炎!とても綺麗でした!まるで月の光のように煌めきを放つ"ムーンダスト"みたいです!」
「ムーン…ダスト?」
瞳を輝かせて興奮するように言えば、初めて聞く花の名前に星川さんは首を傾げた。
「あ、ムーンダストと言うのは『青いカーネーション』のことです。すべてを優しく包み込む月の光をイメージした花で、世界で唯一の美しい花なんですよ」
「!」
ムーンダストの話をすると、星川さんは驚いた表情で私を見ている。
「そんなことを言われたのは初めてです。僕の能力は…──燃やすことなんです」
そう言って星川さんは腰に下げていた布の袋から紙切れを取り出した。
それがふっと宙に放たれたかと思うと───紙がいきなり燃え上がった。
彼が、触れたわけでもないのに。
「(本当に綺麗…)」
「奇術じゃないんですよ。フクロウの関係者以外に見られてしまった時はそういうことにしますけど」
彼は穏やかに笑み、言葉を続けた。
「さっきのは練習だったんです。これでもかなり自由に操れるようにはなったんですけど…まだ完全ではなくて。だからもし裏庭で時々鬼火が燃えていても、僕の仕業ですから怖がらないで下さいね」
.