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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第29章 導火線-コウイ-



「私もあの子が将来どんな女優になるのか楽しみなの。まだ先の話だけど、もし舞台デビューが決まったら、一緒に見に行こうね」



「え?」



自分の失言に気づくのが遅くて、驚いた隼人の表情を見て先程の発言にハッとする。



「あ!?ち、違くて…今のは、その…!」



「…それって、俺と一緒に行きたいってこと?」



「…もし、行くなら…他の人よりも、隼人がいいなって…思っただけ…」



頬を赤らめて恥ずかしそうに視線を彷徨わせながらモゴモゴと呟くと、隼人は溜息を一つ零す。



「…お前な、朝っぱらから俺を困らせないでくれよ。この俺様の…鉄の理性が危うくなるじゃん」



「え?え……っ?」



隼人は私の両手をギュッと握り、嬉しそうに笑う。



「いいよ、一緒に見に行こうな」



「あ、あああの…っ、手…っ!」



「怖い?」



「こ、怖くはない、けど…」



「最初の頃に比べたら引っ込めなくなったよな、手。それって俺には触られても平気ってことだよな?」



「っ……………」



隼人があの時かけてくれたおまじないがまだ消えずに続いているせいかもしれない。



『お前なら絶対にできる』



男性が怖くて触れられない私が勇気を出すために隼人がかけてくれたおまじないだ。



そのおかげで最初は指先すら触れなかったのに、今ではこうして隼人だけには触れられるようになったのだが…



「隼人…その、もうそろそろ…」



「もう少しだけ」



「うぅ……」



恥ずかしさでどうにかなりそうだ。



「…よし!充電完了!」



隼人はパッと手を離した。



「今日も独りで巡回頑張れよ!だけどあんまり気負い過ぎて無理はしないこと!」



「…うん!行って来ます!」



ただ、残念ながら意気込みと結果は比例しないものらしく、その日も和綴じ本一冊さえ見ることが出来なかった。



✤ ✤ ✤


少し遅くまで書店を巡った後、私は元の世界へ帰る方法を調べに図書館に向かった。



「(やっぱりそれらしき本はないか…。)」



私達フクロウは通常の閉館時間を過ぎても滞在することが出来る。



「(そう簡単に見つかるわけないよね。)」



誰もいなくなった図書館で元の世界に帰る方法を探すもこれと言った情報は得られなかった。



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