第25章 天地天明にかけて-ヒトメボレ-
「(でも既にピアスしちゃってるし…)」
私が手に取ったそれをそっと戻した時だった。
「今のイヤリング、似合うんじゃない?そのピアスも凄く似合うけどさ、イヤリングの方が立花の優しい雰囲気に合って良いと思うよ」
「そ、そう?あ、有難う」
また正面から褒められて
私は照れ臭さに小さく後ずさる。
「でも、女ってお洒落するとがらっと印象変わるよな。眼鏡の時と今じゃ全然感じが違う」
「(……え?)」
隼人がさらりと口にしたその言葉に私の動きが止まった。
「(…あれ?眼鏡を掛けていたのは女学生の時だけ…隼人は女学校時代の私なんて知らないはず…)」
私はマフラーをギュッと握る。
「……───あの?……い、以前に……女学校の頃などに会って……ました?」
「……あ!?」
「(会ってた…の?)」
「………………」
「………………」
何とも言えない沈黙に、私はまたそろりと一歩だけ後ずさる。
するとそれを見た隼人が一歩だけ歩み寄り───真っ直ぐに私を凝視める。
「あのさ、突然で悪いんだけど」
「…な、何?」
「俺、立花に一目惚れしたんだ」
「……え?」
今、何か物凄い言葉が聞こえた気がした。けれどそれは余りにも唐突過ぎて、私の中に上手く入ってこなかった。
「女学校時代に、あのウエノ公園のベンチに座ってよく本を読んでたろ?」
「…よ、読んでた…けど…」
今…さっき…確か…一目…惚れって聞こえたような…?
「そんなあんたを見て、いいなって」
「…いいな、とは?」
「コロコロと表情が変わるんだ。楽しそうに笑ったり…悲しそうに泣いたり…驚いた顔もしてた。この子、見てて飽きないな、って」
「……あ、あの」
「それで、その…知り合いが名前を偶然知ってて、教えてくれて。でも卒業しちゃって、どうやって捜そうかなって思ったんだけど……───まさかこういう形で再会出来るなんて」
「…隼人?」
「好きです、貴女のことが」
「!!??」
反射的に逃げようとした私の手を、隼人が掴む。
「待った!これ冗談じゃないから!全部本当だから!!天地天明にかけて違う!!」
「あ、ああ、あの……!?」
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