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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第23章 愛を伝えるために-キセキ-



ガチャッ



「叶斗様…」



「ピアスを貰おう」



クロエは叶斗に茜色のピアスを渡す。



「彼女から伝言ガ…」



「その必要はない」



「!」



「全て聞いていたよ」



「彼女は…幸せを望みまシタ。貴方との約束ヲ守れないことを…とても悔やんでいましタ。詩遠を…恨ンでいますカ?」



「…………。このピアスに込められた誓いは彼女を繋ぎ止めておく為だった。罪悪感に囚われた彼女はきっと僕の傍を離れない。そう思っていた」



「叶斗様…」



「そうか…僕との約束よりも…幸せになることを選んだのか」



叶斗は写真立てを見つめる。



「愛する人…彼女はそいつの元に行ってしまったんだな」



「ハイ。とても幸せそうな顔デした。彼女はやっと…自分の幸せヲ手に入れたのデス」



「そうか」



ピアスを握り締めた叶斗は、茜色の瞳で空を見上げた。すると一匹の鳥が、白い羽根を羽ばたかせ、何処かに飛んで行くのをじっと凝視めていた…。



✤ ✤ ✤


屋敷を出た私は、泣いていた。空色の瞳から溢れ出た涙は頬を伝い、地面に落ちる。



「(全部、終わった…。)」



ピアスが外れた耳は小さな穴が空いていた。そこに在ったのは、彼と交わした"約束の証"だった。彼女を一人にさせてしまった後悔と彼女を死なせてしまった罪悪感。そして…幸せにならないという彼との誓い。



だから私はその約束をずっと守ってきた。



誰かと幸せになる自分を許してはいけない。例え好きな人が出来ても、想いは伝えてはいけない。彼を不幸にしてしまうから。



でもおじい様は言ってくれた。この世界に幸せになってはいけない人間などいないと。それでも私は幸せを拒んだ。彼との約束が私を縛っていたからだ。



幸せになるのが怖かった。穢れてしまった私を愛してくれる人なんていないと思ったから。でも…彼は受け入れてくれた。



もしかすると私は、彼に愛されるために、彼を愛すために、あの世界に飛ばされたのかもしれない。



だから今は……────。



「みんなに…滉に会いたい───!!」



晴れやかな気持ちだった。
会いたい気持ちが逸る。



「さて…問題はここから。どうやって向こうの世界に戻るか考えないと…」



私は顎に手を添えた。



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