第23章 愛を伝えるために-キセキ-
「落ちそうになったら流石に君の体ごと抱えて止めてたよ!」
「(嘘ばっかり。思いきり本気で突き落としたくせに…!)」
「さぁ詩遠ちゃん!いつまでもこんな場所で話し込んでいないで早く君の家に連れて行ってよ!ベッドの中でボクと愛を囁き合おう…!」
『好きだよ、詩遠』
あの時の滉の言葉がずっと耳の奥に残ってる。忘れることのできない優しくて甘い言葉。幸せな思い出を…こんな奴のせいで壊されたくない。
「貴方ともう二度と会うことはない。私も…これでやっと貴方を忘れて生きていける」
「ま、待ってよ詩遠ちゃん…」
「これからは彼が私を愛してくれる。貴方が私に与えた恐怖なんて忘れるくらいの永遠の愛を、彼にたくさんもらったの」
「え、永遠の愛!?」
「貴方がどうやってあの世界に来たのかは知らないけどナハティガルに入り浸っていた謎の男は貴方だったんだね」
「ナハティガル…?」
「ねぇ、もし私がここから落ちて死んだら貴方はどうしてた?」
「そんなの決まってるじゃないか!君のいない世界に未練なんかない!だったら死後の世界でもボクは君を探しに行くまでさ!」
「(あぁ…そうか。きっとこの男は私を突き落とした後、自分も…)」
「君の為なら何だってするから、ボクを捨てないでよ詩遠ちゃん!ボクは君とこれからもずっと───……」
私に近付き、手を伸ばしてきた男を腕をナイフで切りつけた。
「ぎゃあああっ!!」
「触らないで。彼以外に触れられたくない」
「この…調子に乗るなぁぁぁ!!!」
猪の様に突進してくる男をタイミングに合わせて横に飛んで回避する。
「っ!?うわっ!!お、落ち…うわあああっ!!」
そのまま階段から派手に転げ落ちた男は、体中を地面に打ち付け、痛みで声を上げた。
「痛い〜〜!!痛いよお〜〜!!骨…ッ、骨が折れたぁ〜〜!!た、助けてくれ〜〜!!」
子供のように泣き叫ぶ男の声を聞き付け、近所に住んでいる住人達が何事かと慌てて外に出て来た。
「うわっ!?何だコイツ!!」
「まさか落ちたのか!?」
悶絶している男を見て住人達が驚いた表情を浮かべて助けようとするのを見て、私は階段の上から声を張る。
.